7月は愛の血液助け合い運動月間です。コムタクの献血の思い出を書いてみました。
よかったら読んでください
昔は結構献血していた。
運転免許試験センターに大型バイクの免許を取りに行っていた頃だ。
当時は「限定解除」と言って試験場での実地試験に受からなければ大型バイクの免許が取れなかったのだ。
その合格率は3%。一日に100人受検して3人くらいしか受からない。
申し込みは1〜2か月前から埋まってしまう。
合格率3%の試験を2か月毎にしか受けられないなんて一生受かる気がしない。
インターネットなど無い時代の情報収集はバイク雑誌の記事か、まことしやかなウワサくらいしかない。
「試験場の献血に協力すると受かりやすいらしい、、、。」
私がそんなウワサに乗せられたのは言うまでもなかった。
運転免許試験センターの献血車で献血すること数回。オカルティックなウワサのおかげなのか無事「限定解除」に成功した。
当時の「限定解除」は正に選ばれしモノ、狭き門を通過した者のみが排気量に制限なくバイクを選ぶことができる。
それを手に入れるためなら血液の10リットルや20リットルなんとも思わなかった。
その後も何度か献血に行ったが、新宿の献血ルームに行った時はたまたまポッカリと空いた平日の午後にその前を通りかかった。
「只今O型の血液がたりませーん!お願いしまーす!」
たくさんの人が無視して通り過ぎていく。中には眉間に皺を寄せて邪魔そうな視線を送る人もいた。
ちょっと可愛いらしいその娘は雑踏の中で一生懸命に呼び込みを続けている。
ノルマがあるのなら協力してあげたくなる。ノルマも無いのにこんなに一生懸命にしているなら尚更だ。
私の血液型は今必要とされているらしいO型だ。体重も少し減らしたい。
決して可愛いらしいその娘と会話したいからじゃない。
頭の中で誰かに言い訳しながらその娘に向かって歩き出した。
案内された献血ルームは予想外に清潔な空間であった。
SF映画の宇宙船の中みたいに真っ白だ。
ドリンクとお菓子が「御自由にどうぞ」のポップと共に並んでいる。
私には献血車での経験しかない。
外はアジアNo.1の繁華街、新宿歌舞伎町。
明らかにサービスのお菓子目当てのおじさんがウロウロしていることに外の世界を僅かに感じる。
「こちらへどうぞ」
整然と並んだリクライニングシートに案内される。
はて、先程の娘じゃないぞ。
いつの間にかベテランの看護師さんに代わっている。
やられた。さっきの娘は呼び込み専門らしい。
やるな日本赤十字社、繁華街らしい手を使いやがる。
よく見れば、鼻の下を伸ばしてここに連れ込まれたであろう中年男が数名撫然とした表情で採血されている。
「ドラキュラ城か」
私は諦めてリクライニングシートに身を預けた。
「アルコール消毒します。アレルギーは大丈夫ですか?」
「大丈夫です。」
「気分悪くなったら言ってくださいね。」
「はい。」
右腕に僅かにチクリとした感覚を覚える。さすがベテランだ。
採血の上手い下手がわかるくらいは献血したのだ。
「気分悪くなったら言ってくださいね。」
「はい。」
無言で眼前のモニターに映る環境映像を観ていると、
「気分悪くなったら言ってくださいね。」
とまた尋ねられた。
「・・・はい。」
しばらくするとまた、
「気分悪くなったら言ってくださいね。」
ベテランが尋ねてくる。
なんなんだ。30秒毎に確認する義務でもあるのか。
「気分はどうですか。」
この問答をあと何回するつもりなのだろうかと考えると少し気分が悪くなった。
「ちょっと気分悪いかも、、、。」
そう私が答えると、ベテランナースはパッと明るい表情になり、
「まあ!大変!ちょっとコレを飲んでください!」
と紙パックのスポーツドリンクを差し出した。
よく見れば周りのおじさんたちもみんなストローを咥えている。
きっと辟易する問答を繰り返したのだろう。
ふぅ。と溜息をついてドリンクのストローを咥え生温い液体を口に含み、モニターに映る南欧の街並みやエーゲ海の景色に癒されていると、しだいに視界の上下が狭まりスーッと気持ちよく暗闇に落ちていった。
どれほどの時間が経ったのか、手首の冷たい感覚に違和感を感じ、瞼を開けるとモニターの映像は消えていた。
そして手首と足首は金属製のリングでシートにガッチリ固定されている。
寝ぼけた思考回路でまだ状況が把握できない。
「すみませーん」
反応がない。静か過ぎる。僅かな音量で流れていたクラシックも聞こえない。
学生時代に講義中に寝てしまい、誰もいない夜中の教室で目覚めた記憶がフラッシュバックする。
隣りを見ると先程のおじさんも私と同じく手首をロックされている。目を閉じているその顔色は土気色だ。
「おじさん!おじさん!」
呼び掛けに反応がない。呼吸もしていないようだ。
その時、モニターが突然明るくなり見覚えのある顔が浮かび上がった。
「うるさいざますねぇ」
怪物くんに出てくるドラキュラだった。
「終わりましたよ」
目を開けるとモニターには氷山で戯れるシロクマの親子が映っていた。
夢か。。。
汗をびっしょりかいた私の腕から針を抜きながらベテランナースが尋ねる。
「気分はどうですか。」
「だ、大丈夫です。」
隣りはもう空席になっている。見回すと隣りにいたおじさんはお菓子コーナーでお菓子を物色している。よかった。
「休憩コーナーで少し休んでくださいね」
ベテランナースに促され休憩コーナーのベンチに座った。
なんだかフワフワして400cc分以上に体が軽くなった気がする。
新しい献血カードを財布にしまい、見送るベテランナースに会釈をしてエレベーターに乗った。
外は相変わらずの喧騒だ。なんだか安心する。
「献血お願いしまーす!」
先程の女の子は相変わらず呼び込みを続けていた。
夕方の気配を感じ空を見上げると不規則な動きをする黒い影が見えた。数匹のコウモリが飛び交っている。
なんとなく、献血ルームのあるビルを見上げるとサーっと血の気が引いた。
献血ルームの上の階の窓に
[すなっく☆怪物ランド]
の看板があったのだ。
呼び込みの女の子を見るとニコッと微笑んだ口元に長めの八重歯がキラリと光っていた。
という強烈な思い出がありました。
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