コムガール(りお)5歳。とても楽しかったピアノ発表会

こんにちは。コムタクです。

COMUGICO発足のきっかけのひとつが、中村ピアノ教室の存在である。
“障害児専門”ではないが、メニューに障害児を対象としたレッスンがある。

SNSでその存在を知り、体験でレッスンに行った時、ひとみ先生の人柄と優しいレッスンにすぐに入門を決めたのは2018年。
ムスメが3歳3か月のときである。

HPには様々な資格を持ち、輝かしい賞を沢山受賞している経歴が記されている。
なんとなく厳しい指導者なのかなと思っていたが、美人で優しく上品で可愛らしい先生であった。
私も仕事が休みの際はレッスンに帯同していたが、ここ最近はコロナ禍での密な環境を避けるために、しばらく母娘のみでレッスンに行っていた。

しかし最近では母のムギコが闘病生活に入ったため、私が娘に同伴してレッスンに通っている。
こんな状況を想定していなかった時、ひとみ先生から発表会へのお誘いがあった。
「よかったらリオちゃん、発表会に参加しませんか?」
我が耳を疑った。発表会だと?
まだ譜面も読めないのに。
(私もオタマジャクシは全くわからない)
どの鍵盤がドかもわからないのに。
(私もわからない。鍵盤って全部白いんだもん)
人差し指しか使ってないのに。
(私もきっと人差し指しか使えない)

つまり、私がピアノの発表会に参加するのと同じってことだ。

これはどういうことだ?
社交辞令なのか?どういう返答が正解なんだ?
「ウチの娘はまだまだ未熟ですので、、、」
か?
「他の方々にご迷惑をおかけしますので、、、」か?

私が0.5秒ほど悩んでいると隣のムギコが目をキラキラさせて「もちろん参加します!」と挙手していた。
慌ててひとみ先生を見ると「良かった!」と無邪気に喜んでくれていた。
そうだ、ひとみ先生はそんなくだらない社交辞令など言う人じゃなかった。
私は自分の俗っぽさとマイナス思考に少しガッカリした。

そして時はきた。
当日は雨だった。さて、会場は遠くはないが我が家からの公共交通機関でのアクセスはちょっと不便な場所である。
この日の為に用意したシックなワンピースとフリフリの靴下、そしてピカピカの靴。
水溜りを見ると突撃する習性がある娘が、会場まで無事に辿り着けるとは思えない。
16kgの娘を抱っこで会場までエスコートするのを想像しただけで腰が痛くなる。
ましてワンピースは抱っこしづらいのだ。まるで海老天のように中身だけ抜け落ちてしまうのである。
帰宅後に使うことになる湿布の在庫を確認していると、妻から
「お友達のママが一緒に連れてってくれるってよ」
とのお知らせ。
ありがたい!困っているときいつも助けてくれるファミリーだ。
コロナ禍でしばらく会えていない、娘と同じダウン症のある女の子のご家族の車に同乗させてもらい、いざ会場へ。
車内では久しぶりのお友達との邂逅にはしゃぐ娘。
お友達の女の子はお姫様のようなドレスだ。
ママに似て美人である。パパ同士はなかなか交流がないので割と淡白な付き合いが多いが、こちらのパパとはウマがあう。きっと尻に敷かれてるモノ同士だからかもしれない。

少し早めに到着した会場は楽器店に併設されたホールだった。
高そうなピアノやガラスケースに入ったヴァイオリンが並ぶ店内をはしゃぎ回るお嬢2人。
なかなかの場違いだが、心の広いお店の方はニコニコと眺めている。
万が一グランドピアノをキズモノにしてお買い上げになったら、自己破産するしかないので度量の小さい私は生きた心地がしなかった。
そうこうしているうちに開場の時間となった。

コロナ禍での開催であり、短時間・コンパクトなプログラムであるが、客席と舞台があり
スポットライトの中で演奏するのはたしかにコンサートである。
私であれば緊張で過呼吸を起こすだろう。
自分の番になる前に脱走するかも知れない。
しかし、お嬢2人は違った。
日々の練習とひとみ先生とのレッスンに裏付けられた自信からくるのか、全く緊張していないようだ。
日常と違う空間に全く臆することなくちょこんと待機場所の椅子に座っている。
泣き叫びながら私にしがみつき、ヨダレと鼻水、涙でワンピースをグショグショにして撤退するというストーリーをも想定していた私は少々拍子抜けした。
きっとお友達が隣りに居て、ここが楽しい場所だと認識しているのだ。

撮影は自由だったのでスマホのビデオ録画を確認する。私はしばしば録画ボタンを押し忘れ、ただ液晶画面越しに娘を見てるだけということがあるのだ。
今回そんな事態になったら帰宅後どんな酷い目にあわせられるかわからない。
大丈夫、バッテリーも満タンだ。

司会者のアナウンスがおわり、いよいよコンサートが始まった。

トップバッターはお友達。スレンダーな体型にドレスがよく似合っている。立ち姿勢も美しい。舞台で客席に向かいペコリとお辞儀をし、自然に椅子に腰掛ける。見事な演奏だ。バッチリ練習した成果を遺憾なく発揮している。
連弾しているひとみ先生が優しい眼差しで隣りから見守っている。
演奏後の立ち振る舞いも完璧であった。

娘は2番手での登場だ。
少し大きめのピカピカの靴は普段履いているハイカットスニーカーと履き心地がだいぶ違うのだろう、ドタドタと足音も高らかにステージに上がる。直前のリハーサルはまだ忘れていない。先生の左側に直立不動の構えだ。いいぞ!
そしてお辞儀、まるで体力測定の前屈のように身体を折り畳み、足首を掴んでいる。すごい柔軟性だがお辞儀が過ぎている。
そして椅子によじ登る。手を貸そうとするひとみ先生の手を振り払い足をジタバタさせてなんとか登攀したが、右の靴は脱げてしまった。
自力で登れたのが嬉しいのかニコニコして得意気に客席を見回す。ボルダリングじゃないぞと思いながら、脱げた靴を履かせてくれているひとみ先生に心の中で手を合わせた。
先生の合図を待たずに鍵盤を叩き始めるリオ。全く慌てず巧みな連弾でフォローするひとみ先生。音程はもとより、リズムさえも変幻自在のリオの演奏が先生の連弾で音楽に聴こえる不思議。
思わず手を振ってしまう愚かな私。リオが手を振り返したら演奏が台無しになるところだった。

ニコニコとこちらに笑顔を振りまく娘。一丁前に身体を揺らしてリズムに乗っている。
二曲演奏を終え、舞台上から客席にしっかりと前屈して娘のコンサートデビューは終わった。
先生と二人で舞台にあがり観客の前でピアノを弾くことができるなんて大した舞台度胸である。
そういえば以前ダンスの発表会でたくさんの仲間達とステージに上がったことがあるが、その時も全く臆することはなかった。

これまで何回となく思ったことだが、私は娘のことを過小評価してしまっている。
ひとみ先生の方が正しく娘を評価してくれていたようだ。
“出来ないだろう”とか”無理じゃないかな”ということを毎回笑顔で乗り越える娘を、改めて誇らしく思うのであった。

娘とレッスンに行く度に「リオちゃん可愛い!」「すごいよリオちゃん!」と褒め可愛いがってくれるひとみ先生。娘もレッスンが楽しみで仕方ないようだ。
まさに”音を楽しむ”をピアノを通じて体現させてくれる中村ピアノ教室。
コンサートステージでの嬉しく、誇らしげな娘の笑顔が忘れられない。

人に褒められた記憶など、思い出せないほど遥か昔の私もひとみ先生の指導でピアノを練習したくなってしまったのだった。

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