障がいのある・なしに関わらず、みんなが一緒に楽しめるイベントを実施し共生社会を目指すNPO法人サプライフ
代表のミホこと、みほさんは、我が家ではミポリンと呼ばれている。因みに我が妻の通り名はミキティだ。
2人は”打ち合わせ”という名の長電話を頻繁にしている。妻はとても楽しそうだ。
何の打ち合わせだかは知らないが、狭い我が家ではおしゃべりの内容は大体推測がつく。
きっと96%ぐらいはどうでもいい話であろう。
人間の寿命が発した言葉の数で決まるとすれば、2人とも長生きはできそうにない。
側で聞いていても不快にならないのは、その会話に「悪口」がないからだと思う。
最近は子守唄のように私を眠りに誘う2人の長電話である。
そんなある日、いつものようにウトウトしていると、「ミポリンがお願いだって!」
と妻が唐突に話かけてきた。
「ハイ!よろこんで!」と反射的に答えた。
私はいったい何を頼まれたのかわからないまま、また気持ちよいまどろみの中に戻っていく。瞼の裏には中山美穂がニッコリ微笑んでいた。
翌日、妻に「オレ昨日何か頼まれた?」と聞くと、妻の口から驚くべき事実が語られた。
「サプライフ のクリスマス会でサンタクロースだって。あんたサンタ頑張って!」
酷いダジャレだ。反射的に快諾したことは薄っすら覚えていた。
「ニヤニヤしながら寝落ちしちゃって気持ち悪かったよ」
うろたえる私にニヤニヤしながら追い討ちをかけるミキティ。
もう後には引けない。
サプライフ は”共生社会”の実現を目指すNPO法人だ。代表のミポリンはかわいい娘二人を引き連れ精力的に活動している。決して器用な方ではないが、突き進む突進力と流石の歌唱力で周囲を魅了していく。
彼女の周りにはやはり同じベクトルの素敵な方々が集まっている。
ミポリンは磁石なのだと思う。強烈なリーダーシップで皆を牽引するのではなく、いつのまにか彼女に惹きつけられて、惹きつけられた人もまた磁力を帯びて誰かを惹きつけていき、いつのまにか大きな塊になっていく感じ。
さて、サンタの話だが、スペシャルニーズのある子どもの支援活動はなぜかママ率が高く、パパ陣の参画は皆無というのが私の実感である。頑張れ野郎ども!と普段から言っている手前後には引けない。
人生初のサンタだ。どうしよう。
まずは少しでもサンタに近づくためにこのスレンダーボディをダイナマイツボディに改造しようと思う。と宣言すると
「鏡と現実から目を背けないで」と鏡を渡された。どうやらボディはサンタ的に問題なさそうだ。
サンタはクリスマス以外の時は何をしているのか。1月から11月はクリスマスの準備をしているというのが定説だが、私は西新宿の地下街でサンタ的なルックスの人達が段ボールで生活をしているのを度々目撃している。
つけ髭とトンガリ帽子だけではリアリティがイマイチと思い、ヘアスタイルにも拘る事にした。束ねたスズランテープを細く裂き、少しくせっ毛のロングヘアを作成した。なかなかのリアリティだ。
よし、遠目には普通のホームレスに見える。
おっとイカンいつの間にか、目指す方向がホームレスになってしまった。
妻はアイシングクッキーを張り切ってつくり始めた。
20分後、「上手く出来ない・・・」と絵が上手く描けないと半ベソをかいていた。酷いダジャレだ。
アイシングはなかなか良い出来と思ったが、本人は納得がいかないらしい。理想は高いが現実が伴っていないのは夫選びと同じだ。ほっとけ。
我々がこんな感じでアホな日々を過ごしている間にも、クリスマス会のメインコンテンツである人形劇の台本や絵コンテが、次々とLINEで共有されている。
台本は限られた時間内に起承転結をメリハリよくレイアウトし、随所に観客である子ども達を参加させ楽しませる工夫が散りばめられている。
そして、まるで絵本作家が書いたような絵コンテ。
すごい完成度だ。トドメに超美声のナレーションも音声ファイルで送られてきた。
「話しが違う・・・」
勝手に”子どものお遊戯会”程度のクオリティを想像していた私は完全に油断していた。
しかもサンタの出番は最後の大トリ。ヤバイ、ヤバすぎる。お腹が痛くなってきた。
半ベソをかきながら、一度しまったスズランテープのカツラを取り出し、少しでもリアルにする為に再びスズランテープを裂き続けた。
そんなこんなで当日。
本番は14:00からだが、11:00に会場入りをした。11:30からリハーサル。
場所は豊島区上池袋コミュニティーセンター。線路が合流する三角地帯の一角。隣接するゴミ焼却場のバカデカイ煙突が目印だ。
ビル風が吹き抜ける中、少し迷ってたどり着いた。
「おはようございまーす」
会場に入るとサプライフ のメンバーがもうすでに会場の準備をしている。
人形劇のラストで晒すであろう大醜態を今のうちに少しでもリカバリーしておこうと、準備作業を率先して手伝おうとしたが、あらかた準備は完了してしまっていた。
広い会場で子ども達がキャッキャと遊んでいる中、キラキラしたサプライフ メンバーの目をまともに見られない私は、逃げ出したい衝動を必死で堪えていた。
リハーサルでサンタが現れるわけにはいかないので、人形劇の背景をめくる係を任命された。
模造紙に描かれた絵はそのまま絵本にしたくなるくらいステキなイラストで、早く次のページをめくりたくなってしまう。
パペットを操るメンバーはちょっと心配になる程かなり無理な体勢で舞台の下に潜り込んでいた。
様々な小道具を使って子ども達に参加を促すタイミングや、コルネットの演奏時間の調整をして完成度を高めていく。
終始美声のナレーションに聞き惚れていると、ミポリンのクリスマスソングが圧倒的な存在感で心を揺さぶる。
リハーサルでこれだもんな。ヤバすぎだ。
もう逃げだすチャンスはない。
リハーサルは無事終了。
外の冬風で少し頭を冷やそうとエレベーターで1階に降り、自動ドアの外で深呼吸をした。
その時、妻と娘が到着した。
「パッパー!」と娘が飛びついてきた。
その無邪気な笑顔を見て思った。
娘に恥をかかせてはいけない。何を迷っているのだ。完全なサンタになるしかない。
おまえはサンタだ。サンタになるのだ!
頭の中にはタイガーマスクのテーマが流れ始めた。
隠れていてラストで登場するサンタは本番を観劇できない。
時折聞こえるおおきな歓声が舞台の盛り上がりを教えてくれる。
倉庫の中でサンタ服に着替え、入念につけ髭とお手製カツラのポジショニングを調整し、顔の露出範囲を最小限にする。
準備時間に子ども達と触れ合い過ぎたので、顔バレしないか少々心配だ。
たった一行のセリフを何度も読み返し確認する。手袋のせいでスマホの操作ができずあせる。スズランテープがものすごい静電気を発生させ、薄暗い倉庫にスパークする。瞼に張り付くスズランテープ。
土壇場での混乱とパニック。
「みんなでサンタさんを呼ぼう!サンタさーん!」
無情な呼び込みの声が聞こえた。
サンタ降臨!!
サンタが憑依した私が次に意識を取り戻したのは、プレゼントを配り、写真撮影を終えた後だった。
会場からハケるタイミングを逸して、ポツンとイスに座っていた私は、近くの人に、
「スミマセン。次がアルのでソロソロ帰るアルヨ」とかろうじてカタコト風に別れを告げ、廊下に出ると周りに人がいないことを確認し、ものすごい早業で衣装を脱ぎ会場に戻った。
身体のあちこちにスズランテープのカスをまとわりつかせ、変な汗でビショビショの私を娘が不思議そうに見つめていた。
本番はほとんど倉庫の中に居た私だが、このクリスマスパーティーが大成功だったと断言できます。(サンタを除いて)
2時間余りのこのイベントの為にサプライフ のメンバーが粉骨砕身してる裏側を垣間見ていた私は、終了時間になってもなお名残惜しそうに笑顔で会場にたむろしている人達を見て全てが報われたと感じました。
少々残念だったのは旦那連中の参加率が低いこと。来年は誰かにサンタ役を譲って、客席で全てを観劇したい。
来年のサンタは、そこの貴方ですよ。
私はこの後の忘年会で意気投合したサプライフ メンバーの旦那さんとバンドで出させてもらったりして。
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