葛谷舞子さんの写真展 LIFE〜「笑顔のカケラ」

「子供に障害があっても幸せに暮らす家族はたくさんいることを伝えたい」
そんな思いを込めて開く写真展「life~笑顔のカケラ~」が開催されました。

日程 2021年9月17日~23日
時間 平日10:30-19:00/土日11:30-17:00(最終日14時)
場所 富士フォトギャラリー銀座

29組の様々な障がいを持つ子どもとその親との2ショット写真を展示しており、我が家も恥ずかしながら29組の中に入れていただいています。

撮っていただいた写真の素晴らしさと葛谷さんの人柄にすっかり魅了されていた私は、絶対に初日にご挨拶したいと思っていた。
当日の午前中東京の西端での業務を終えて、都心ド真ん中の「富士フォトギャラリー銀座」に向かった。
電車を降り、2時間前まで居た山の中とは真逆の景色の中、スマホの案内を頼りに歩き出す。
早くも秋めいた風が足早に歩く身体にとても心地良い。
辿り着いたのは午後3時を過ぎた頃、モノクロームの写真を展示するギャラリーも薄墨色で統一された落ち着いた空間だ。
黒を基調にしたファッションの葛谷さんが受付で来場者と歓談しているのが見え、
「こんにちは!」
タイミングを見計らい挨拶をすると、葛谷さんの目に一瞬困惑の色が走った。
「・・・葛谷です。(どちら様?)」
と葛谷さん。
無理もない。SNSやメディアで私は葛谷さんを見知っているが、実際にお会いしたのは一度きり。しかも写真展初日の午後などは来場者への対応で疲労困ぱいしている筈だ。
娘とセットでなければ親の顔など覚えていないのは当然至極だ。寂しくなんかない。
そういう私の顔認証システムも酷いもので、
15年ぶりにバッタリ会った高校のクラスメイトを仕事関係の知り合いと思い込み、1時間近く噛み合わない会話をしたことがある。

傍には葛谷さんの娘さんと息子さんが警戒の眼差しでこちらを見ている。
「あ、小川と申します。。」
私が名乗り終わる前に、突然爆笑する葛谷さん。
「あ!小川さん!」
どうやら違う人と勘違いしていたらしい。
よっぽどユニークな人と間違えたのだろう、
しばらく笑いが止まらない。
キョトンと母親を見つめる子ども達。
なにはともあれ不審者の嫌疑は晴れたようだ。
仕事帰りでスーツだったのも災いしたようだ。スタジオへ伺った際も、SNSも大体私はTシャツ・ジーパン姿だったのでスーツ姿は異様だったのだ。

真っ先に妻の具合を尋ねてくれ、少しキツそうだけど頑張っていますと伝えると葛谷さんの目から涙が溢れた。
爆笑した直後の涙に子ども達は再びキョトンとしている。

葛谷さんは妻の病を知るとすぐに暖かい手紙とお見舞いを送ってくださり、なんだか心細かった私達はとても感激したのだ。

沢山の来場者や新聞社やTVの方がいる中、葛谷さんを独占するわけにもいかず、早速写真パネルを拝見することとした。
SNSや新聞で見た写真がキャプションを添えて展示されている。

①これからの夢
②障害がわかった時の気持ち
③今の気持ち

が簡潔に書かれたキャプションだが、それぞれの親子のストーリーを活き活きと感じ取れた。
私のダラダラしたブログ記事なぞより、よほど雄弁に語っている。
モノトーンの会場に飾られたモノクロームの写真の中から、はっきりとしたコントラストで光り輝くようにカラフルな笑顔が弾けて見えた。
「色彩」と「表情」という異なる表現手法でコントラストをつけているのだ。
写真や芸術に全く疎い私は、それが一般的な手法なのかはよく知らないがそう感じた。

「COMUGICOさんのチラシが足りなくなりそうなのでもう少しもらえますか?」
なんとも嬉しい葛谷さんの言葉と共に再来場の理由ができた。

数日後、娘を連れて再び会場へ向かった。
休日の上り電車はガラガラだ。娘はお約束のコムT着用だ。娘と完全なペアルックを装う勇気の無い私はボツになった試作タイプのコムTを着た。
太平洋側に進路を外れた台風が雲を巻きとっていったような晴天である。
「休日だし天気いいし大勢来場してるだろうな。挨拶してチラシ渡して早めに退散しよう」
娘のご機嫌にもよるが、機嫌が良ければ笑い声がでかいし、悪ければ泣き叫ぶ声で会場の雰囲気をぶち壊しかねない。
いずれにせよ長居はできまい。
先日来たばかりの会場に少し迷いながら到着するとやはり沢山の来場者が来ている。
この日は娘同伴でコムT姿であったので、すぐに認知してもらえた。

幸い娘のご機嫌はいい感じだ。自分のパネルを見つけると近くで見せろと抱っこをせがむ。そしてその場を離れたがらず、観に来てくれた方々のジャマになり始めた。
抱っこのまま移動するが、自分のパネルの前に戻れと駄々をコネ始め、自分のパネルを見てくれている人を威嚇する始末だ。
なんとか一巡りして受付に戻ると、葛谷さんから少し前に6歳の誕生日を迎えた娘に誕生日プレゼント(大好きなディック・ブルーナのタオルセット)を頂き、フォトモデルのマイさんからは可愛らしいモフモフの手作りチャームを頂いた。
誰に似たのか現金な娘は大喜び。ご機嫌は無事復活した。

家にも飾ってある我が家の写真。

自分の写真から離れない娘・・・。

記念に葛谷さんと3ショット(嬉しい)

写真展には沢山の方がいらしてました!

フォトモデルのマイさんと

東京新聞さんで写真展の連載が6回に渡り紹介されました

久しぶりに会えたフォトモデルのみのかちゃんにエスコートしてもらいました @ minoka21(Instagram)

女子力高いしオシャレ!!すっかり優しいお姉さんに(萌え)@ minoka21(Instagram)

COMUGICOにも掲載させて頂いている空手教室”障害児の休日クラブ”の主催者の先生にもお会いすることができた。
只者でないオーラを放ちつつ愛弟子のマイさんを見る眼差しは穏やかで優しい。

葛谷さんの旦那様やご両親にもお会いでき、素敵な人柄は血筋なのだなと納得した。
娘はお腹が空いてきたらしく、盛んにポテト食べたいをアピールしてきた。
癇癪を起こされる前にポテトを食べさせる必要がある。
来場者も更に増えてきたし、そろそろ退散のタイミングだ。
葛谷さんに再び御礼と退散の旨を伝え、後ろ髪を引かれながら写真展を後にした。

先天的な障害を持つ子どもを授かった親は、今後の様々な苦労を想像したり、その子の将来を悲観し、不幸に思ったり悲しんだりするのが一般的なのかもしれない。
また世の中には「障害児・者=かわいそう。家族も大変」なんて公式が蔓延している。

“障がい児・者”と一括りにしがちだが、みな様々だ。活発な子もいれば大人しい子もいる。
共通しているのはみんな表情が正直なのだ。
写真家にとってこんなに撮りがいのある被写体はなかなかないかもしれない。
また、私個人としては何より”親”の表情が印象的だった。
だらしなく垂れ下がった目尻と緩みきった口角。
その表情からは、その子を授かった時の悩みや悲しみなどもう微塵も感じることはできない。
この子らが全力で表現する幸せは、その親から枯れることのない愛情を湧き出させると思うのだ。

最近気になりだした自分の目尻についたカラスの足跡は、加齢によるものだけではないのだと、美味しそうにポテトを食べるカラスの足跡の原因を眺めながら思うのであった。

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