リアルイベント|今こそ共に歩こう 誰一人取り残さない世界へ Buddy Walk Tokyo 2021 for all

昨年に続き新型コロナウィルスに翻弄され続けている2021年。
各種イベントは開催中止や形態、規模の変更縮小を余儀なくされている。
主催者サイドの疲弊は想像に難くない。
政府や行政も未曾有の出来事に右往左往している。

今回のバディウォーク東京2021forAllでは3月にオンラインイベントも実施しており、様々な方の映像や支援メッセージ、まるでゲームの中にいるようなバーチャル感覚、自宅に居ながらイベントにちゃんと参加している感覚はすごく新鮮で、その新しい試みに感動したのは記憶に新しい。



そして一度延期になったリアルイベントがいよいよ開催となったのだ。

しかしサプライフの受難は続く。
三度目の”緊急事態宣言”の発出が発表されたのは正にバディウォーク2021の直前だった。
“緊急事態宣言”が始まるのはイベント翌日の日曜日からと決定したのだ。
不安定な情勢の中、政府の指針に従うことを明示していたNPO法人サプライフ。
ひとまずイベント開催が可能となってよかったとホッとしていたところ、スマホのFacebookに「お力をお貸しください!」のポップアップが上がった。
サプライフメンバー内山さんの投稿だった。
なんと当日ボランティアを予定していた団体が”緊急事態宣言”発出の影響で参加不能となったと言うのだ。
前日にボランティアスタッフ30名以上の欠員。
これは痛い。致命的とも言える事態だ。
しかし、参加不能となってしまったボランティアの方々を責めたりはできない。
なにせ政府方針の表明が急過ぎたのだ。
よし!COMUGICO軍団出動せよ!
と号令を出したいところだが、そんな軍団は残念ながら存在しない。

裏の軍団長は業務を片付けるため、目を血走らせてPCと格闘している。
キーボードを叩く振動でコップがカタカタ揺れている。
エンタキーを叩きつけた衝撃で棚からモノが落ちた。
キーボードの隙間から火花が散る。
5か月かかる作業を5日で終わらせなければならないらしく、メシも食わずにキーボードを叩いている。
親の仇のごとく叩きのめされるラップトップが気の毒でならない。
なんとか終わらせて参加したかったようだが、ちょっと厳しそうだ。
「ちょっと、、、バディウォーク行ってきますね」
と言うと「いいなぁ。あ、3時からオンライン会議だから、悪いけどそれまでに帰宅ヨロシク!みんなにも宜しく言っといてね!」
とPCから目を離さず私を送り出した。
朝、娘の起床前はPC作業に集中できる貴重な時間なのだ。
私は娘を起こさぬよう息を潜めつつ、足音に気をつけながら玄関を出た。

自宅の張り詰めた空気と裏腹に外は素晴らしい晴天だ。
私は大きく深呼吸して会場へ向かった。
春と夏の間、暑からず寒からずの絶好のイベント日和。
バディウォーク開始は10時だ。
ボランティアとして参加する為、30分早く招集が掛かっている。
もちろんCOMUGICOを少しでもアピールしたいとの下心丸出しのコムT着用である。

サプライフ代表ミホさんとのツーショット。目をつぶってしまいました。。

会場の代々木公園までは渋谷から歩いて10分ほどだ。まだ朝の9時くらいの時間帯はお店も開いておらず、人影もまばらだ。坂道をテクテク登って行き、信号待ちでふと顔をあげると角地のビルに沢山の笑顔が咲いていた。
Merry Smile Projectの”笑顔の傘”の特大垂れ幕がはためいている。
なんとなく今日もいい一日になりそうな予感がした。

坂道を上りきった所が会場の代々木公園”けやき並木通り”だ。
イラストレーターの toomari さんによるかわいらしいイラストの描かれたオレンジ色の幟旗や看板が並んでいる。
どことなく70年代、80年代のノスタルジーを感じる画風がいい感じ。コラボキャラの”ニポと仲間たち”もいる。

テントの設営やキッチンカーはスタンバイ完了しているようだ。
鮮やかなオレンジ色のTシャツを着た人達が忙しそうに動いている。

開催にあたっては予約サイトによる事前予約制を導入し、事前に参加人数の把握と制限をするという手法を導入していた。
当日は入退場のゲートを分け、入場時の体温測定と消毒を徹底することで万全の感染対策を行っていた。
万が一、いや億が一感染者が出た場合の備えとして、保健所に提出する為の連絡先記帳も必須であり、COCOAというアプリのインストールも推奨している。

手順を踏んで受付を済ませ、サプライフ内山さんに電話して到着を伝えた。
少し先で手を振っている内山さんと無事合流し、本部テントに案内してもらう。
昨日の緊急招集により、ボランティアはあっという間に無事人数が揃ったらしい。
困った時に力を貸してくれる仲間がたくさんいるのは流石というしかない。

ほどなくボランティアスタッフの朝礼が始まった。
サプライフ代表ミホさんが短く挨拶し、「楽しみましょう!」「おー!」と気合いを入れる。
「さーてどんな割り当てになるかな」と内山さんの采配を待つ。
原宿側受付班、渋谷側受付班、テーブル消毒・マスク会食喚起班、と呼ばれていくがまだ名前が出てこない。
ようやく”キッズコーナー班”で名前を呼ばれた。
風船を配り、おもちゃを販売する係だ。
全体的に女性率が高いイベントなので我が班も私以外は女性だ。

チームメイトに
「よろしくお願いします!」
と挨拶し、準備開始だ。もうすぐ10時の開始時間が迫る。
ここは唯一の男子で圧倒的最年長の私が、持ち前のリーダーシップを発揮するしかない。
いつになく湧き上がる闘志。
自宅で完全に女性陣の下僕と化し、抑圧された私の魂に火が付いた!
と、その時
「ゴミ拾いチーム出発するよー!」と渋谷側受付辺りから声が上がった。
そう、今回のバディウォークは大人数でのパレードではなく、green bird渋谷とのクリーンアップコラボ企画、”共に歩いて私たちの街をきれいにしよう”という企画があるのだ。ウォークイベントの主体とも言える。
「あ!行かなきゃ!」「後、お願いしまーす」
チームメイト達は去ってしまった。

気を取り直し、用意された看板を長テーブルに貼り、商品を確認する。
風船と、風船と、フーセン、えーと風船、、、風船多いな!
商品のラインナップは内蔵されたケミカルで膨らむ風船刀(50円)、パチパチ鳴らすと光る鳴子(100円)、光るライト付きシャボン玉(100円)、タイヤ付きイヌのおもちゃ(300円)の4種類だ。

テーブルに並べる前にイベントがスタートしてしまった。
子ども達に配る風船をプラスチックのハンドポンプを使い必死で膨らます。
膨らんだ風船にプラスチックの棒をセットしテーブルの端にテープで仮止めする。
おっさんが必死の形相で風船を膨らます姿に怯えたのか、子どもが全然近寄ってこない。
幼いころ夏祭りの夜店でテキヤのおっさんが怖くて金魚掬いを遠巻きに見ていたことを思い出した。
とびっきりの猫撫で声で「フーセンどーぞ」と呼びかけたが、ますます後ずさる子ども達。
人波は私のいる”キッズコーナー”を避けるように蛇行している。
とりあえず、風船を膨らまし続けよう。
減らない風船はやがてテーブルの縁に仮止めする場所がなくなった。

「どうですか?」
内山隊長が気にして様子を見に来てくれた。
「ぜんぜんダメっすわ」
テキヤの子分のように少し不貞腐れ気味に報告した。
「おどれ、気合い入れて売らんかい!」と怒られると思いきや、「頑張って下さいねー」と優しい労いの声。
思わず潤む瞳を内山隊長に向けると、優しい言葉と裏腹に隊長のその目は「頼りない男ね」と言っているようだった。

木漏れ日の中、気持ちいい風が吹いていたが、その風すらも私を嘲笑うかのように膨らませた風船をあちこちに飛ばす。
飛ばされた風船をドタドタと追いかける私を見て皆、失笑している。

オレのチームメイト エレナさんとその友達

参ったな。心折れ、売れ残りを全て買い上げ、着払いで自宅に送る算段を始めた頃、チームメイトが帰ってきた。
「売れました?」「いや全く、、、」
ゴミ拾いウォークから帰ったばかりの2人は、休むことなく売り子を始めた。
若さってすごいな。と思ってよくよく見ると2人とも若すぎやしないか?
「お2人ともママさんですか?」と尋ねると、「高校生ですけど!」とまさかの答え。
完全に親子参加のイベントという先入観でチームメイトとの間に深い溝を作ってしまった。
狼狽える私を尻目に「いらっしゃーい。おもちゃありますよー!風船どうぞ!」と積極的に売り込みをかける。
あれよあれよと言う間に”キッズコーナー”に人集りができる。なんだよ。なんなんだよ。
オレ1人の時は誰も来なかったくせに!
私の心は少しばかり傷ついた。あれだけ膨らませた風船がもう無くなりかけている。
「風船お願いしまーす」彼女達の声が私には
“ボヤボヤしないで膨らまし続けなさい!”
と聞こえた。
もう最年長のリーダーシップなどどこにも残ってはいなかった。

高校生の頃の私は休日にボランティアに参加するなんて考えたことも無かった。
バイトするか、友人達と街をウロつくか、バイクで意味なく走り回ってるか、そんな休日だった。
子ども達におもちゃを手渡す彼女達を見て、過去の自分を少しだけ恥じた。

チームメイトの1人が、おもむろに風船刀とタイヤ付き犬のおもちゃを持ち出し、「ちょっと私、売ってきますわ。」と言って売り場を離れ会場の中心に向かった。
空気で膨らむイヌのおもちゃを引きながら、まるで勇者のように風船刀を肩に載せて歩く後ろ姿はかなりシュールな光景であった。

売り場が少し空いたのはステージイベントが始まるからだろう。ステージの方からミホさんの歌が聞こえてきた。
今回のバディウォークの為にプロが楽曲提供してくれたオリジナルソングだ。
NPO法人サプライフのロゴモチーフにもなっているブドウがイメージになっている曲だ。

曲名 ブドウの実
楽曲 HOME MADE 家族
WEB 公式サイト
Twitter @ mckuro_1119
NPO法人SUPLIFE

マスクしたままとは思えない美しい歌声が会場に響く。
今までのバディウォークでも度々ミホさんの歌を聞いているからか、過去に参加したバディウォークの記憶が蘇る。
定番の”パプリカ”、鉄板の”ボヨヨン行進曲”と続き、数年前に娘を持ち上げて踊り、腰が砕けたことを思い出した。

ステージの楽しそうな様子を背中で感じながら私はひたすら風船を膨らまし続ける。キッズコーナーの向きを逆にすればよかった。

そうこうしているとチームメイトの勇者が帰ってきた。お供の犬は居ない。
「売ってきたよー。次は何色の連れてこうかな」
すげぇな。あっという間に商品が品薄になる。

途中、休憩を代わってくれたボランティアの方々もその売れ行きにおどろいている。
私は休憩の間そう広くない会場を見て回った。
渋谷側の入口を入るとすぐに協賛している企業、団体のテントが並ぶ。
その先のブルーのプラスチック製フェンスに囲まれたエリアは車椅子バスケの体験コーナーで常に賑わっている。
並んでブラインドサッカーのエリア。ボールが転がる度に鈴の音と子ども達のはしゃぐ声がしていた。
そして全体の中央にメインステージがある。
ステージといっても一段高いわけではないし、線が引いてあるわけでもない。
観覧者と演者が同じ高さの目線で、かつ分断されていないので会場の一体感は最高だった。
実際ミホさんのパフォーマンスの最中も子ども達が周囲で楽しそうに踊ったり、走ったりしていた。

メインステージ横の休憩エリアはテーブルセットがかなり間隔を空けて配置されている。
感染予防の観点からだと思うが人が座っても隣のテーブルと充分な間隔があり、ベビーカーや車椅子も気を遣わず通行できる。

晴天の中、このオープンエアの空間は本当に居心地が良く、両サイドに並ぶキッチンカーの提供する美味しそうな食べものをここで食べるだけでも休日の過ごし方としては最高だろう。

参加者はみな手に紙を持って会場のあちこちにある立て看板を巡り、クイズラリーを楽しんでいる。
旧知の方とも何人か再会することができた。SNSで拝見してその活動・活躍は知っていても、やはり直接会えるのはとても嬉しかった。

そろそろ裏の軍団長との約束の時間だ。
撤退までに一つでも多くの風船を膨らますため、いそいそとキッズコーナーに戻り、腱鞘炎一歩手前までエアポンプを動かした。
まだまだこの居心地良い空間に留まっていたかったが、チームメイト達に片付けに参加できないことを詫び、またいつかの再会を願いつつ会場を後にした。

渋谷駅に向かって坂を下りながらバディウォーク東京2021 forAllを振り返ってみた。
昨年のバディウォークは新型コロナの第一波により、参集してのイベントは中止になってしまった。
長年主催していたNPO法人アクセプションズさん達はきっと忸怩たる思いだったに違いない。

名称 NPO法人アクセプションズ
WEB 公式サイト
Facebook @ npoacp
Instagram @ npoacp
YouTube チャンネル登録お願いします

 

そしてバトンはサプライフに渡った。
その重責は想像に難くない。しかもいつ終息するかもわからないコロナ禍の中だ。
アクセプションズさんのバックアップや、大勢の支援者に支えられていたとはいえオンラインとリアルの2本立ての企画、実施は本当に大変だったと思う。
むしろバディウォーク自体を中止にする方が、ある意味簡単だったはずだ。新型コロナウィルスが理由であれば誰一人責めたりしないだろう。逆にリアルイベント開催には山ほどのリスクがある。
通常時の場合であっても発生する交通安全や迷子などに加えて、三密状況による感染やクラスターの発生。
自粛ムードに後押しされたバッシングが主催者や参加者に向けられるかもしれない。
それを承知で開催に邁進したNPO法人サプライフ。
なぜそんな重たいバトンを受け取ったのか、今ならわかる気がする。
きっとスタッフ全員に今回のイベントが大成功におわり、参加者みんなの笑顔が見えていたのだろう。そしてそれが原動力になったに違いない。

そして見事にその通りになったのだ。
私の右腕と引き換えに膨らませた風船が、僅かながらでもみんなのその笑顔の一部になったならこんなに嬉しいことはない。
そう言えば、なんだかんだ私も一日中笑顔だった。

そんな私の背中に向かって、バディウォーク東京2021forAllのオレンジ色の幟旗が手を振るようにはためいていたのだった。

曲名 ブドウの実
楽曲 HOME MADE 家族
WEB 公式サイト
Twitter @ mckuro_1119
NPO法人SUPLIFE

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