吉祥寺コレクション。この響きには少し複雑な想いがある。
2019の吉祥寺コレクションで娘はファッションブランドtenboのモデルとしてランウェイを歩くはずであったが、未知のウィルスによる疫病が流行し、数度の延期の末中止になってしまったのだ。
我が家の落胆は相当なものであった。
その後それを埋めて有り余るフォローをしてくださったtenboには感謝してもしきれない。
↓過去記事です
今日は娘と2人で井の頭公園に向かった。
tenboのロングスカートとライダースジャケットは娘のお気に入りコーディネートだ。
私にもお揃いのライダースジャケットを着ろと駄々をこねる娘。
サイズアウトという言葉は子供服限定のものではないと認識を改めつつパツパツの革ジャンに身体を押し込む。
路線バスに乗り込み車窓から外を見るとイチョウの葉がやや黄色味をおび始めていた。
革ジャンを着ても違和感ないくらいに秋も深まりつつあると感じた。
隙あらば降車ボタンを押そうとする娘と静かな攻防を繰り広げるうちに目的地に到着した。
正午の日差しは思ったより強い。雑踏のなか井の頭公園まで歩くうちに汗ばんできた。
階段を下り園内に入り落ち葉で覆われた地面をザクザクと音を立てて進むと、ファッションショーのステージはすぐそこだ。
会場には沢山のテントが立ち、様々なお店の販売ブースとなっていて色々覗くのも楽しそうだ。後で回ってみよう。
野外ステージは開放感満点。晴天と相まってこの上ない心地良さだ。
ショーは始まっていたがtenboのステージには間に合ったようだ。
一つ前のブランドのモデルさん達が音楽とナレーションに乗って次々とステージに現れる。
「つぎ、りーちゃん、ばん!」(次、私の番!)
とステージに突撃しようとする娘を押さえつつtenboのステージを待つ。
今回は5人のモデルさんが和服を再利用した服を纏うという。皆名の知れたモデルさん達だ。
和服の生地を利用してドレスを仕立てるのではなく、和服最大の特徴ともいえる召し合わせ部分を活かしつつtenboのアイデンティティが注がれ一目で鶴田さんのデザインとわかる。
服やデザインに無頓着な私にでも感じる何かがあるのだろう。実に不思議だ。
ナナミさんのお姉さんでランウェイを歩く姿は大人のモデルさんに全くひけをとらない。むしろ自然で健全な笑顔は大人のぎこちないスマイルの何倍もステキだ。
何より驚いたのはそのままステージに残り、その後のtenboステージを津軽三味線の音色で演出したことだ。
見事なバチさばきで演奏でも観衆を魅了していた。
和服を再利用したtenboの衣装とまさにベストマッチの音色である。
リアイさんのInstagramはこちらから @ oxhelloriaixo
デザイナーの鶴田さんと共に登場した。自由奔放なナナミさんはステージの縁に腰かけ客席に手を振ったりしていた。クールなイメージの鶴田さんがナナミさんに翻弄されている姿はちょっとコミカルで会場を一瞬で和ませていた。
衣装からは古の農家の子どもを連想させる素朴さとエネルギーを感じた。この衣装はお転婆なナナミさんにピッタリだったと思った。
ナナミさんのInstagramはこちらから @ oxhappynanaxo
カズハさんのドレスは鮮やかなブルー。キリッとした色味とカズハさんの穏やかな表情のコントラストが引き立てあって日本一似合っていたと思う。
カズハさんはその後のMCを引き継いだが、表情と同じく穏やかな語り口と柔らかい声はなんだかホッとする素晴らしいMCであった。
カズハさんのInstagramはこちらから @ kazuha_angel_rebirth
ケントさんの衣装はゴールドの襟飾りが特徴的でどことなく宣教師の雰囲気。全体の黒と金のバランスとケントさんの佇まいが和や洋、男女などを超越した何か神聖なムードを醸していた。
ケントさんのInstagramはこちら @ kento_i222 @ kento_izumi222
西洋文化と東洋文化が絶妙にミックスされたシルクロードを思わせるデザインの衣装を、黒髪で背筋のピンとしたリュウキさんが纏うとまるでアジアン貴族のような高貴な空気が漂う。
特徴的な背中の三角形のデザインはリサイクルマークを象徴していたのだろうか。
前半はMCも務めていたが流暢なアナウンスは訓練されたものなのだろうか。
リュウキさんのInstagramはこちらから @ ryuki_tobo
以上はファッションやデザインに全く知識のない、小太りおじさんの主観で勝手に解釈しただけなので悪しからず。
今回のテーマは”サスティナブル”。
素材の和服はtenboの活動を知った方が終活の一環で私物を提供してくださったという。
鶴田さんはサスティナブル(持続可能)は服や素材がカタチを変えて次代へ継続していくことだけでなく、持ち主の想いも繋げて行きたいと考え「和」の要素を色濃く残したのではないだろうか。
この説も私の想像に過ぎない。
私は作品から感じたことを作者の人柄や背景、テーマなどのキーワードから勝手に分析し妄想するのが好きなのだ。
ショーが終わり、tenboの皆様にご挨拶をしようとステージ上手(かみて)のエリアに近づく。
取材やインタビューの対応で忙しそうなので少し離れた場所で控えていると「こんにちはー!リオちゃん久しぶりだねー!」
tenboのスカートを履いた娘とtenbo Tシャツの私を認識してくれたスタッフの方が気さくに声を掛けてくれた。
自分がステージに上がれなかったのが気に入らないのか少し不機嫌な娘。緊張もしていたのだろう私の後ろに隠れてしまった。
一段落したところで記念撮影をおねがいするとモデルさん達は快くOKしてくれた。
ところが娘はモデルさん達の隣りに並ぶことを断固拒絶し暴れ出す始末。引き立て役になりたくないという女心なのか。
しばらく拗ねてしまった娘をなだめたり、おだてたりご機嫌とるのが大変であった。
少し機嫌が戻ってきたのでお詫び方々tenboの物販テントに向かう。
「お店少し手伝ってくれますか?」
数々のアクセサリー等の小物をキラキラした目で眺めている娘にスタッフの方が声を掛けてくれた。
嬉しそうに頷き、早速カウンターがわりの長テーブルの向こう側に回る。
家でアンパンマンレジスターを使いこなし、私やぬいぐるみ相手に買い物ゴッコをしている娘は、得意そうな顔で
「いらっしゃいませー!いらっしゃいませー!」
と呼び込みを始めた。
視線は私をロックオンしている。
(家でのままごとじゃないんだぞ!)
「いらっしゃいませー!いらっしゃいませー!」
ニコニコと満面の笑みでさらに大声を張り上げる。ちょっとうるさい娘を黙らせようと、
「こ、これください。」
缶バッジを差し出し様子を見る。
「いらっしゃいませ〜?」と言いながらハンドメイドのリボン付ヘアゴム、キャラクターブローチも渡された。
差し出す手にお金を渡すふりをしてみたが、娘は「はぁ?ままごとじゃないんですけど?」
という目でこちらを見ている。笑ってもいない。
(ご機嫌回復の手間を考えるたら素直に支払ってしまった方がいい)
娘は渡した現金を嬉しそうにスタッフの方に持って行った。
スタッフの方が丁寧に袋詰めしてくれている間も娘は「いらっしゃいませー!いらっしゃいませー!」と迫ってくる。
私の財源にも限りがある。マズイぞ。
所用でどうしても来られなかったムギコに土産を買って帰る必要もある。
娘と視線を合わせないようにしていると、ハンガーにかかったTシャツが目に止まった。
そういえば新作のユリモチーフのTシャツが気になると言っていた。
大胆なデザインのそのTシャツは私も気になっていたのでムギコへの土産名目で一枚購入させて頂いた。
この間もモデルの方々やスタッフの方々に可愛がってもらい娘の機嫌は上々だ。
ノベルティの布バックにtenboのロゴをシルクスクリーンで入れるサービスがあり、塗料を自分で伸ばす作業をした娘は大興奮で奇声をあげていた。
モデルの方が差し入れてくれたアイスクリームを父娘で頬張りながら思った。
tenboのショーで関わったモデルさんやスタッフさんは皆フレンドリーで優しい。
ステージ上でのふとした仕草や動きにも内面から滲み出る優しさに美しさを感じるのだ。
もしかしたら鶴田さんは内面までもモデル選考の対象にしているのかも知れない。
傍らで口の周りをベタベタにして夢中でアイスクリームを貪る娘をみながら、モデルへの道が果てしなく遠いことを実感していた。
帰宅後、ゲットした商品を満足げに眺める娘。
ムギコへの土産として購入したTシャツも
「りーちゃんの!りーちゃんの!ぜーんぶりーちゃんの!」
と言いムギコから取り上げている。
「大き過ぎだよ。着てみる?」
と仕方なくTシャツを渡すと娘はニコニコしながらサイズLのTシャツを被った。
あら不思議、民族衣装的なワンピースとしてなんだか成立した。
娘は昼間のステージに上がれなかった鬱憤を晴らすようにいつまでもポーズをキメては写真を撮れと要求してくるのだった。
名称 | tenbo(テンボ) |
デザイナー | 鶴田 能史 |
WEB | tenbo 公式サイト |
WEB | Pray for Peace Collection 2020 |
詳細ページ | 障害者/難病ファッション |
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