社会のダイバーシティを考える 立つ、歩く、走る―義足でこえる心の壁

先日、新型コロナウィルスワクチンの職域接種に勤め先の本社に行った。
地元での接種も可能であったが、実はもう一つの目的があったのだ。

勤務先の東京本社(本店)の1階にはギャラリーA4というギャラリーがある。
“えーよん”ではなく、”エークワッド”と読むのだ。
全く親近感の湧かない気取った読み方である。
私が本店に行くのは年に一回の健康診断と、少し大きな工事の決裁を受けるときくらいだ。
常に何かに追われるようにバタバタしている私は、入口を入ってすぐ右手のギャラリーA4は大概素通りしてしまう。

今回の企画を知ったのは、恥ずかしながらInstagramで他の人が上げているのを見て開催を知り、ハッシュタグに鉄道弘済会と勤め先が並んでタグ付けされていてビックリしたからだ。

鉄道弘済会といえば以前ブログで書かせてもらったように、素晴らしい支援活動を長く継続している団体であり、今回の義肢装具展の核となる義肢装具サポートセンターの運営もしている。

COMUGICOはあくまで非営利活動であり、日々の生活の糧は仕事で稼ぐサラリーに100%依存している私は”仕事”と”COMUGICO”は漠然と並行するものとして考えていた。
それがギャラリーA4で微妙に交差した。
不思議な感覚だ。

とにかくこのタイミング、ワクチンの職域接種を夕方の業務時間ギリギリで設定し、行動予定を「本店〜直帰」として義肢装具展に行ってみたのだ。

ワクチン接種はなんら問題なくアッサリ終了。15分間じっと座っていなければならない。長く感じる時間であった。

1階に降り、早足でギャラリーA4へ向かう。

A4の受付でも体調確認・検温・手指消毒を行い、パンフレットをもらう。
いよいよ見学開始だ。
会場は様々なパネル展示と実物展示、義肢装具士が一人の少女の義足を製作する映像展示で構成されている。
決して広くないスペースだが、面ごとにカテゴライズされたパネルはとても見やすくレイアウトされていた。
少し薄暗い感じがしたが、展示物はライトアップされており、見にくいということはなかった。
一応順路はあるが、コーナー毎にテーマが違うので空いているコーナーを順不同で見学できる。説明文をしっかり読むとそれなりに時間がかかるので、他の方とバッティングしないよう空いてるコーナーをランダムに見て周った。

ビデオ上映のコーナーは義肢装具士の方が、一人の少女に義足を作る製作工程とフィッティング、義足によって拓かれる少女の未来が20分くらいの映像に纏められている。
我が娘のインソールを作ってもらった時も感じたことだが、人体に無機物を装着するという作業は個人差や成長、動きを考慮し手作業で作り上げるので、製作者とユーザーのコミュニケーションがとても重要である。

ビデオでも装着した時だけでなく、様々なシュチュエーションでの使用感を細かくヒアリングしていた。
機能しない自分の足と決別し、より可能性を広げる為に義足を選択した少女。
きっとすごく悩んだに違いないと思う。

はにかんだ笑顔で義足にしてよかったとピースサインをする少女。この笑顔のために義肢装具士達は頑張っているのだと思った。

またパネル展示や実物展示も充実していた。

ビデオ映像内で実際に製作された義足の型取りから完成までの実物モデルや、遥か昔の義手義足から近未来的な物、競技に特化した物や、もはやアートとなった物と様々な実物が展示されていた。

失った肢体機能を補完するものから、一見義肢とは見えないリアルなもの、そしてあえて見せアピールするものと、義肢装具を取り巻くソフト面での変遷も興味深い。

義肢装具の歴史を年表に現したパネルでは、戦争による肢体欠損が義肢装具の飛躍的な進歩に直結していることに、なんだか不条理なものを感じざるを得なかった。
ゆっくり見て廻っても1時間くらいで充分見て廻れる。
惜しむらくは平日の日中しかやってないのだ。

平日夕方の微妙な時間。勤務時間といえば勤務中、公私混同的な背徳感にさいなまれながら受付の方と言葉を交わした。

「COMUGICOという情報サイトを運営しています。一般社団法人COMUGICOの小川と申します。」

名刺を差し出す。
受付の女性は私の首にぶら下がった社員証を
不思議そうに見つめている。

「ウチの会社の人ですよね?」
あ!ヤバイ!受付、社内の人だったの?!

狼狽えながら必死に非営利で運営していることや、就業時間外で活動し、業務に支障のないことをしどろもどろで弁明した。
「大丈夫ですよ。言いつけたりしないので。」受付の方は軽く失笑しながら言った。

オーダーメイド品をユーザーの要望を取り入れ作り上げる。義肢装具と建築にはそんな共通点はあるものの、全くジャンルの異なる分野に焦点をあて展示する自分の勤め先をちょっとだけ誇らしく思いながら、夕暮れの東陽町の街をほんの少し大股で地下鉄に向かい帰路についたのだった。

それから数日経つが今のところ上司からそのことでは注意や叱責は受けていない。
めでたし、めでたし。

8/5まで開催していまーす。
是非、行ってみてください!

会場 ギャラリーA4(エークワッド)
東京都江東区新砂1-1-1 竹中工務店東京本店1F
会期 2021年6月11日(金)~8月5日(木)
入場料 無料
休館日 日曜・祝日、7月24日(土)
開館時間 10:00-18:00(土曜、最終日は17:00まで)
問合せ先 ギャラリーA4(エークワッド)事務局 TEL:03-6660-6011
主催 公益財団法人 竹中育英会
WEB http://www.a-quad.jp/exhibition/exhibition.html

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