アートパラ深川!すみだストリートジャズフェスティバル!|イベントハシゴの日曜日

今日はハードな一日になるだろう。
秋はイベントの多い季節だ。この日はアートパラ深川 おしゃべりな芸術祭とすみだストリートジャズフェスティバルがダブルブッキングだ。
正直に言うとどちらもサルサガムテープのライブがあるのだ。
コロナ自粛も一段落し、堰を切ったようにイベントが各所で催されている。
情報サイトを運営しているとたまに「あれ?」っとデジャブのような感覚を受けることがある。
アートパラ深川のイベントもそうだった。
車椅子の製作販売をしている群馬県の”るーと”さんがSNSでイベント情報を発信しているのを見た後、別のSNSで神奈川県の”NPOハイテンション”さんが同イベントの告知をしていたのだ。
るーとの代表、高岸さんのFacebookはかなりマニアックだ。電動車椅子を制御するための装置やコントローラーを自作したりする様子を頻繁にアップしている。

かつてはオートバイに熱中し、バラバラにしては組み立てたり、深夜まで直してるのか壊してるのかわからない作業をしたりしていた私には高岸さんに何か「機械いじり好き」の共通点を感じ、親近感を覚えていた。
会いたいと思っても会えないことが当たり前になっていたコロナ期間であったが、今なら会いにいける。当日ご挨拶に伺うことを一方的にFacebookのメッセージで送った。

その翌日、NPOハイテンションのInstagramでサルサガムテープが同イベントでワークショップとストリートライブを実施すると知り、先程のデジャブ感に見舞われたのだ。

同じイベントで会いたい人達に沢山会える!
「一粒で二度と美味しい」アーモンドグリコ状態である。
しかも距離はあるが電車で一本だ。天気予報も悪くない。
こうなったら娘も巻き添えにしよう。

その数日後、再びサルサガムテープの別のライブ告知を目にした。”すみだストリートジャズフェスティバル”あれ?この日はアートパラ深川でのライブがあったはず、、、。何かの間違いかな?
疑問はすぐに解決した。時間帯が違うのだ。
なんとお昼と夕方で別々のイベントでライブをするという。
仕方ない。どちらにも参加するしかないじゃないか。

当日はいつもより多めのオムツを持ち、家を出た。天気も良く野外イベントには最高の気温だ。
全く土地勘の無い場所に行くため、いつまでも娘との別れを惜しむムギコを引き剥がし、少し早めに家を出る。
残念ながらムギコは所用の為、参加できないのだ。
電車に乗ること1時間。目的地の駅に着いた。
どうしてもコレがいいといって選んだカナデノウツのTシャツにネオンイエローのチュチュというキテレツないでたちの娘。私はサルサガムテープのTシャツ着用だ。

私のワクワクウキウキを感じ取ったのか、車中ずっとゴキゲンだ。
地下の駅舎から地上に出て会場の方角に向けて歩いていると同じデザインのサルサガムテープTシャツの親子に出会った。普段、街中で同じ服の人に出会うとなんだか恥ずかしい気持ちになりがちだが、今回はちょっと嬉しい。
「こんにちは〜!」と挨拶すると親子連れはちょっと気まずそうに会釈をしてくれた。
ついつい足早になりがちになるも、見慣れぬ街並みにキョロキョロする娘の歩速に合わせざるを得ない。
ようやく辿り着いた会場は”のらくロード”という商店街だ。
ここは日本で最初の漫画「のらくろ」を描いた田川水泡(たがわすいほう)さん所縁の地だという。
日本で最初ということは世界初なのだろう。世界中の漫画文化の始祖が描いたのらくろのパネルやイラストがそこかしこに置かれ、商店街ののらくろ愛をひしひしと感じる。
歩行者天国のイベント会場に入ると電動車椅子の試乗会をやっていた。
“るーと”の高岸さんはこの辺りに居るに違いない。面識のない相手だがすぐにわかった。
高岸さんはFacebookでいつも被っている被り物的な帽子を被っていたからだ。
「こんにちは!FacebookでメッセージしたCOMUGICOの小川です。」
一瞬びっくりした様子の高岸さんであったが、すぐに笑顔で挨拶を返してくれた。
レーシングカーや電車など様々な形にカスタマイズされた電動車椅子や最新型の電動車椅子、コンパクトに畳める電動バイクが並んでいる。
「乗ってみるかい?」
タイミングよく試乗コースが空いていたので、すぐに試乗できるようだ。様々な形の試乗車の中から娘は迷うことなく電車の形に改造された車椅子をチョイスした。運転手帽子の小道具まで揃えてある。さっきまで1時間以上電車に乗ってたのによっぽど電車が好きらしい。

運転はリモコンのジョイスティックとボタンによるシンプルこの上ないものだったが、娘が1人で操作するのはちょっと難しいので、高岸さんがマンツーマンでエスコートしてくれた。
娘はキャッキャと喜んでいる。
コースを折り返すとスタート地点には子ども達が列を作って試乗コースの順番待ちをしているのが見えた。いつのまにか大盛況になっていた。
ゴールに辿り着いた娘は渋々次の子どもに譲るが、長く延びた順番待ちの列。
早く2回目の試乗したい娘はグズリ始めた。
見かねた高岸さんが
「これなら試乗コースじゃなくても大丈夫だからここで乗ってみるかい?激遅だけど、、、。」
と幼児用補助椅子バンボにタイヤが着いた奇妙な乗り物を見せてくれた。
目を輝かせる娘と私。実は私も奇妙な乗り物が大好きなのだ。メゴラという前輪がエンジンになっているブレーキの無いバイクが大好きで資料を探しまくった思い出がある。興味がある人は(メゴラ バイク)で検索してみてほしい。

ウケ狙いで作った物ではなく、真剣に作った物が結果的に奇妙になってしまったモノがなんだか愛おしくてたまらないのだ。
この電動バンボも高岸さんが真剣に作った作品であるが、そのフォルムと本気度のギャップが私のツボを刺激する。
意気揚々と乗り込む娘。
補助テーブルに取り付けられた操縦桿を握りしめ前に倒すと前に進む。人が乗ると一層ユニークでコミカルだ。
夢中で走り回っている。と言っても歩くよりゆっくりの速さなので安心だ。
そうこうしているうちに会場の反対側から太鼓の音が聞こえてきた。
サルサガムテープのワークショップが始まったようだ。
高岸さんにお礼を言って太鼓の音を目指した。

ブルーシートの敷かれた場所ではポリバケツの配布が始まっていた。このポリバケツにガムテープを張って太鼓にするのだ。
子どもたちも沢山いたが、大人も同じくらいの人数がいる。まさに老若男女がブルーシートの上で夢中になってガムテープを張っている。
「赤いガムテープ貸して〜。」
「緑のガムテープ使う人〜!」
初対面であろう人達が互いにコミュニケーションを取りながらカラフルなガムテープ太鼓を作り上げる。
用意したポリバケツでは足らず、急遽追加するほどの盛況ぶりだ。
娘もその場で仲良くなった女の子と楽しそうに太鼓を作っている。
娘はまるで先生のように、
「こうやってー、こうして張るのよ。ね。わかった?」
などと少し年下の女の子にお姉さん気取りで作り方を教えている。
女の子のママさんは近所に住んでいて自転車で来場したという。地元のラジオでDJをしているミュージシャンだ。カッコイイ!

コムコム
コムコム
このママさん(ゆっきいさん)が主催する「キラキラミュージック」をコムギコで掲載させて頂けることになりました!

三宅裕司のヤングパラダイスとオールナイトニッポンで育った私は、アメリカ若者が伝説のDJウルフマンジャックに憧れるようにラジオDJに強い憧れがあるのだ。
もっと話をしたかったが、急用ができてしまい途中で帰宅してしまった。
また、前日の吉祥寺コレクションで見かけたと声をかけてくれた方もいてとても嬉しかった。

ガムテープ太鼓が完成すると伝説のロックバンドTHE BLUEHEARTSのドラマー梶さんによるリズムセッションだ。
様々なリズムでガムテープ太鼓を鳴らし、否が応でもボルテージが上がる。
サルサガムテープのメンバーが各々リズムとメロディを奏で始めパレードがスタートした。
歩行者天国の車道を歌のリズムに身体を揺らし、ガムテープ太鼓を叩きながらゆっくりと練り歩く。
歩道のギャラリーは商店街のおじいちゃんおばあちゃんだろうか。みんな笑顔で手拍子を叩いている。実に楽しい!
パレードの後はライブだ。いつものゴキゲンなナンバーが次々と繰り出される。
娘は声を張り上げ歌いながら太鼓を叩いている。
近所の子ども達と思しき小学生のグループもノリノリで踊っていた。
青空の下でのライブはいつもと同じ当たり前にインクルーシブ。
今日は長丁場だからペース配分に気をつけて、体力を温存しようと思っていたが全力で楽しんでしまった。
次のイベント会場への移動時間を気にしながらも、快くアンコールに答えてくれたサルサガムテープ。少しでも手伝いたいと思い、娘と集積された使用済ガムテープ太鼓のガムテープを剥がし、メンバーを見送った。

その後、相変わらず忙しそうな高岸さんに挨拶をし、のらくロードを後にした。

地下鉄で二駅移動し、そこからバスに10分程揺られ錦糸町の駅前に着いた。
街を挙げてのイベント、「すみだストリートジャズフェスティバル」の真っ最中だ。
駅前の広場でもジャズバンドが巧みな演奏を披露していたし、大通りの歩道からはルパン三世のサックスのメロディが聞こえた。
メインステージのある錦糸公園までの数百メートルの間にもあちこちからギターやドラムの音が聞こえた。足を止めて見てみたい気持ちを抑え、メインステージに向かう。土地勘の無い場所で迷子になったら大変だ。
娘はそろそろ疲れてきたはずだ。抱っこで彷徨うなんて想像したくもない。
幸い娘のエネルギーが残っているうちに錦糸公園に着き、目的のメインステージはすぐに見つかった。
1時間くらい早めに着いたため、いい観覧場所を確保できるかと思いきやステージ正面はすでに敷物や折り畳みイスで確保されてしまっていた。
幕間に少しは観客が減るかと思ったが、一向に動く気配はない。
仕方ない。ふと錦糸町にムギコの弟が住んでいることを思い出し、久しぶりに会いたいと思いダメ元で電話してみた。
いつも忙しい彼だが、公園まで来てくれるという。
とても優しく賢い個性的なムギコの弟は音楽活動もしている。
彼が来るまでの間、サルサガムテープのメンバーでダウン症を持つ、娘の師匠AYAさんを探すことにした。
ステージの裏に行くとスタッフが忙しそうに準備しているなか、AYAさんが他のメンバーと談笑していた。
「AYAさーん!」
バックステージを仕切るカラーコーンの外側から大きな声で呼びかけるとこちらに気づいたAYAさん達は笑顔で手を振ってくれた。
娘は狂喜している。

義弟から到着の連絡が来たのでステージ正面側に回りキョロキョロ見回すとすぐに見つかった。
忙しい合間に駆けつけてくれたらしく、すぐに出なければならないという。
きっと無理して来てくれたのだろう。打合せ相手まで連れてきていた。
無理強いしたつもりはなかったのだが、義兄の思いつきに断りずらかったのかもしれない。
ちょっと申し訳ない気持ちになった。
多才で心優しい彼はLGBTQに関する活動家でもある。いつかブログで紹介したい。

さて日も暮れかけステージの照明がますます明るく輝きだす頃、続々とステージ上にメンバーが登場し始めた。
数日間のジャズフェスティバルの大トリがロックバンド、我らがサルサガムテープだ。
実に誇らしい。

人垣でステージが見えてない娘に気付き、前の人がスペースを詰め場所を開けてくれた。
「ありがとうございます」
下手(しもて)の端っこだが視界のひらけた場所に娘のスペースを確保できた。
ステージの上ではメンバーもひしめき合っている。AYAさんもいつものポジションでスタンバイだ。
徐々に空の青色が濃度を増してきた。
後ろの人の邪魔にならないよう前屈みで中腰の体勢で首だけ前に向けた姿勢は想像以上にキツい。腰を下ろすスペースなどないので頑張るしかない。
演奏が始まる。フルメンバーでのセッションはど迫力だ。いつも聴いているナンバーに娘が手を振り回してノっている。
その手が何度も私の鼻を直撃し、涙が出てきた。この体勢では娘の拳の射程から逃れようがない。
数曲後に娘の左側の人がその場を離れたためスペースができた。ふと見ると更に向こう側に昼間会った同じTシャツの親子が見えた。
我々より更に浅い角度のその場所では機材の影でほとんどステージは見えないだろう。
反射的に手を振って、空いたスペースに呼び込んだ。子ども用車椅子は場所を取ってしまうから遠慮していたのだろう。
私の意図が周囲の人にも伝わったようで皆少しづつずれてくれ、子ども用車椅子が通れる空間ができた。
先程までよりはステージがよく見えるはずだ。
車椅子の男の子が少し微笑んでみえた。

数名の高名なゲストミュージシャンを加えた全力全開の演奏は最後の最後まで大盛り上がりのステージであった。
ガチガチに固まった腰を用心深くゆっくり伸ばし、「イテテ、、」と上を見上げるとすっかり日が暮れもう真っ暗になった夜空の向こうにライトアップされたスカイツリーが輝いていた。

AYAさん達に別れを告げようと再びバックステージに回るとAYAさんのお母様に会うことができた。
この人混みの中、偶然会えるなんてラッキーだ。嬉しいサプライズだったが帰路の時間と娘の体力を考えるともう会場を出た方がよさそうだ。
駅に続く大通りを娘と手を繋いで歩いている時、ふと振り返れば巨大なスカイツリーが輝いている。まるで遠くからでもよく見える灯台のようだ。
素晴らしい活動をしている方々の輝きを遠く広く届ける灯台の土台にCOMUGICOはなりたいと改めて思うのだった。

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