Ori インクルーシブミュージック主催の「ようちえんでやるピアノコンサート」へ行きました

永遠に続くかと思われた長く暑い夏もようやく出口が見えはじめた。
台風やゲリラ雷雨による遅延や9月末を完了日に設定した工事が複数重なり、この週末は想像以上にバタバタしていた。

この週末はいくつかの魅力的なイベントが開催されていてどれかには参加したいと考えていたが、開催時間と場所を勘案し、ORIインクルーシブミュージック主催のピアノコンサートに出掛けることにした。
13:30のスタート時間から逆算し、昼食を駅前の回転寿司で済ませておくことにした。
「ちょっとオナカが、、、。」
生魚を避けたいというムギコの希望なぞ娘に聞き届けられるはずもなく、我が家は回転寿司の自動ドアをくぐった。
顔色のすぐれないムギコはほとんど食べなかったが、娘はいつも同じエビ、イクラ、サーモンのネタだけを食べ、食べないくせに注文する納豆巻きを頼み、エビ天入りのうどんを少しとデザートのマンゴーを完食してご満悦だ。
娘の残置したシャリにガリを載せてひたすら口に運ぶ私にウンザリ顔のムギコの顔色はますますよくない。
「アタシ今日は行けそうにないかも、、」
ムギコにはゆっくり休んでもらうことにし、私は娘と2人でピアノコンサートに出掛けることにした。

会場の松沢幼稚園は各駅停車しか止まらないローカル駅にある。
はじめての駅で下車した娘は物珍しそうにキョロキョロと辺りを見回している。駅前が住宅街なのが珍しく感じているようであった。
目的地はすぐに見つかり、30分前であったがもうちらほらとお客さんが来場していた。
会場の幼稚園は決して新しくはないが、高級住宅街に相応しい落ち着いた佇まいを見せており、長い年月この地を見守ってきた風格すら感じる。会場の入口では主催の黒澤さんが我々に気付き小さく手を振ってくれた。

早めに来たのは正解であった。最前列の前には子どもが自由な体勢で鑑賞できる敷物が敷いてあるエリアがあり、ピアノに近いベストな場所を陣取ることができた。
天井の高いその空間はナチュラルウッドを基調とした雰囲気で木地を生かした遊具がキチンと積まれている。広々としたホールは普段園児たちの嬌声で溢れているに違いない。
静まり返ったその空間に休日の学校に忘れ物を取りに行った時に感じる僅かながらの寂寥感を感じる。やがて次々と観客が集まり空間が活気に満ちてきた。あれよあれよという間に満席になり、敷物エリアでは子どもたちが思い思いの姿勢で開演を待っている。
隣りに座る娘も何かが始まる予感にワクワクしているようだ。

ORIインクルーシブミュージック代表:黒澤さんの進行でイベントが始まった。

歩き回っても踊っても泣いても笑ってもいいなんでもアリのというルール説明の中、万一興奮し過ぎてクールダウンが必要な人のための別室まで用意があるとの案内があり、流石だと感心してしまう。
自身が元タカラジェンヌという黒澤さんの人脈によるのだろう、今回も一流の演者が集まっている。ピアニストは某TV番組の一流芸能人を格付する企画でピアノの模範演奏している方だという。
ピアノ演奏が始まった。

「リラックスしていいよ。くつろいでね。」と言ったところで、なかなか子どもたちは前に出てこず最初は娘もキョロキョロと周りを伺っていた。
子どもは「静かに!」と言えば騒ぐ反面「騒いでいいよ」と言えば静かになる生き物なのだ。自分の子どもの頃を思い出した。親戚のお葬式でふざけたらつられて吹き出しそうになった母が必死に笑いをこらえながら怒っていたっけ。
リラックスのお手本を見せようかと目の前の敷物にゴロンと横になろうと思ったが、はるか遠くからムギコの殺気を感じ思い止まる。しばらくすると後列から兄弟と思しき2人の男の子が前に出てきて追いかけっこを始めると徐々に会場の空気が緩みはじめた。

娘も恐る恐る敷物の上をウロウロし始めた。「じっとして、ちゃんと座って!」と言われるかと警戒しているようだったが、私がニコニコしているのを確認すると男の子たちの追いかけっこに加わったり、ピアノに合わせてクルクルと踊ったりしはじめた。
気がつくと敷物の上には座ったり、横になったりと思い思いにくつろぐ子ども達がいた。
超絶技巧を生演奏している前で子ども達がウロウロしている風景はどこかシュールだったが、私の場所からよく見える鍵盤に向かうピアニストの表情は和やかで子どもたちのリラックスムードは演者にも伝播しているようだった。

しかし思ったより騒いだりふざけたりする子どもは少ない。
「泣く子も黙る」高いパフォーマンスに皆聴き入っているのだ。
大人たちも目を三角にして子どもをコントロールする必要がないため、皆穏やかにコンサートを楽しんでいる。
最後は配られた紙にある歌詞を皆で合唱した。カラオケにもあまり行かないので大きな声で歌うのは本当に久しぶりだった。しばし同じ空間を共有しただけの関係性のはずだが一緒に声を合わせて歌うだけでなんだか同志のような一体感を感じる。

ステキな時間はあっという間であった。
どんな特性を持つ子ども達にも楽しめるインクルーシブコンサートだと思っていたが、結局全員リラックスできるコンサートであった。
リラックスして音楽を楽しむことを知った子ども達は間違いなく音楽が好きになることだろう。そして将来自分の子どもにリラックスしてインクルーシブに音楽や芸術を楽しむ喜びを伝えていくのだ。
ORIインクルーシブミュージック:黒澤さんの壮大な企てに気づき鳥肌が立つ真夏日の午後であった。

団体概要

名称 Ori インクルーシブミュージック
活動地域 関東
WEB 公式サイト
Instagram @ ori.inclusivemusic
Instagram @ kikioripu

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