ホスピタルシアタープロジェクト|すべての子どもたちと家族のための多感覚演劇

こんばんは。TAKUです。
先日、ホスピタルシアタープロジェクトのトライアル公演に行ってきました。
ホスピタルシアタープロジェクトとは、”知的障がい、重度重複障がいの子どもたちのためのインクルーシブ・シアターのプロジェクト”様々な障がいを持つ子供たちの五感に働きかけるアートパフォーマンスです。


10月に入りだいぶ秋らしくなってきましたが、この日は半袖で丁度良い気候でした。
14:30の開演時間に娘のご機嫌コンディションをピークに持っていくために、前日の消灯時間・当日の起床時間・お昼寝時間と全て計算した結果、開催地の千歳烏山でランチのスケジュールとなっていました。

実は千歳烏山は数十年前に住んでいた場所です。久しぶりにこの地に足を下ろしたのですが、懐かしむようなゆとりはありませんでした。

初めての千歳烏山に場所見知り気味の娘は、私を抱っこの刑から解放してくれません。
15kgの動くウエイトが腹ペコモンスターに変身する前に何か与える必要があります。

駅前の雰囲気は数十年前とあまり変わってないものの、記憶にある店舗はほとんど入れ替わっていました。
“入れそうな店がみつからない”
しばし駅前をウロウロした後、無駄な動きを極度に嫌う母モンスターの表情が曇りはじめました。
“ヤバイ、不機嫌モンスターが2匹になってしまう”
「と、とりあえず会場に行ってみよう」
と私が促すと、
「迷わずに最短距離でお願いします」
と、両手が塞がり携帯で地図を確認できる状態でない私にプレッシャーをかけてきます。

目的地がコミュニティカフェであることに一縷の望みを持ち、北北西に針路をとりました。
駅前の喧騒はすぐに静かな住宅街へと変わり、比較的新しい集合住宅が見えてきました。

コミュニティカフェは平日のみ営業している場合もあり、今回の開催場所もカフェがイベント開催の日曜日に営業しているとはかぎりません。
両腕と腰が悲鳴を上げ始めた私の視界に、昨夜チェックした”コミュニティカフェ・ななつのこ”の外観が飛び込んできました。

南を正面にして半円形の内側に大きな連窓サッシが配置された開放的な外観。ホームページの写真そのままの明るい雰囲気です。
15kgの動くウエイトと変なプレッシャーのおかげで汗だくの私にはオアシスに見えました。

“ななつのこ”に入りすぐに今日の公演の受付をし、中を見回すとゆとりをもった間隔でテーブルが配置してあり、所々にある棚にはオシャレなグッズが並んでいます。
早速、奥の注文コーナーに行きドリンクと腹ペコモンスター化しつつある娘の食べものをオーダーしました。
注文したのは生姜焼き丼です。
食道が細く喉に食べものを詰まらせやすい娘は普段具材を細かく切って食べています。

専用のハサミを忘れてしまったので、ナイフを貸してほしい旨を伝えると、ごはんと具材を別皿にし、生姜焼きを細かく切って提供してくれました。感激です。
生姜焼きは美味しく、娘は大人一人前をほぼ全てペロリとたいらげました。

時間調整が功を奏し娘は比較的お利口さんです。

インクルーシブシアターやコミュニティカフェななつのこについて色々と根掘り葉掘り聞きたい気持ちを押さえつつ、施設の内外をウロウロしました。
娘は受付をしていたインクルーシブシアターの中山さんにキラキラシールをほっぺに貼ってもらいご機嫌です。

演者の方々は全員透明なマウスガードを着用し、ステージには飛沫防止柵が設置されています。開放的な間取りの会場は窓を全開にし、新型コロナに対する感染予防もバッチリです。

開演時間が近づいてきました。
「1組少し遅れるそうです。少し待ちましょう」
もちろん異論はありません。むしろ、そんな優しい対応にホッコリした気持ちになりました。
その時間も電子ピアノの演奏とコミカルな演者の方々が、子供たちを飽きさせないよう舞台の葉っぱなどの小道具を使ってあやしてくれました。

事前予約の際には、音や光に過敏な子供のために、苦手なものの有無も尋ねてくれました。
観客席は床に敷物を敷いた席の他にソファー席もあり、障がいの種類によっては床への着座が困難な観客への配慮を感じます。

作品を補助的に説明するストーリーブックや子供たちがステージと一体になる為のツールになるバッグ。舞台小道具の葉っぱや木の実、飛沫防止柵まで丁寧な手作りです。
観客を楽しませよう!という気持ちと温もりがあらゆる所から感じられます。

いよいよ開演です!

私の拙い文章で作品のあらすじを説明するなど野暮の極みと思います。
一般的な映画や演劇は視覚と聴覚にほとんど依存しており、そうしたもののストーリーをかいつまんで説明することはそんなに難しくないでしょう。
しかしインクルーシブシアターは知的障がいや聴覚障がいのある子供、視覚に障がいがある子供でも”感じる”ことができる芸術。”五感で感じるアート”なのです。

まず驚いたのはセリフは全くといっていいくらい無く、音楽と演者の動きや表情で表現されていること。
歌には歌詞もあり、サイレントのパントマイムではありません。
マラカスのように音のなる木の実やチクチクしたクリの実、様々な手触りの素材でできた葉っぱにはキラキラしたてんとう虫までついているものがありました。

アート=芸術は時に独りよがりになり、”解る人には解る”モノになりがちとなりますが、このプロジェクトはバリアフリー=全ての人が対象なのです。
我が娘は知的障がいがありますが、楽しい音楽を聞けばリズムに合わせて体を動かしますし、キレイな花を見ればどんな花であろうとチューリップの歌を歌います。
触り心地のいいモノは指先や手の甲、ほっぺたやスネなどあらゆる所で触覚を楽しみます。
クサイものには鼻の前で手をヒラヒラさせ、美味しいものを食べればほっぺたをポンポンします。レモンを舐めた顔は必見です。
そして笑顔を向ける相手には倍返しの笑顔で手を振ります。
何かを感じることと、理解することはイコールではないのです。

語る事でストーリーを説明することの安易さは様々な障がいを持つ子供達を”美しいもの・芸術”からともすれば遠ざけてしまうのかもしれません。
視覚や聴覚に頼り過ぎず、五感全てで感じるステージ。
とにかく暖かく美しい作品に親子共に引き込まれてしまいました。1時間程のステージはあっという間でしたが終始笑顔と温もりに溢れたものでした。

コロナ禍中のトライアル公演の為、4組という少人数の観劇者でした。正直、もったいないと思ってしまいました。
コロナ禍の中、会場手配の苦労や準備の手間や労力を思うとなんだか申し訳ない気持ちになってしまいます。

感染防止のために設置されたステージと客席を分断するスクリーンが、五感の一つ”触覚”による感覚をスポイルしてしまっていたことを中山さんは非常に残念がっていました。本来なら子供たちをステージ上に招き自由に演者や小道具と触れ合うことができる作品なのです。

近い将来、コロナ禍は終息し飛沫感染防止策のスクリーンは無用となるでしょう。
それと共に、ジェンダーや国籍、肌の色、宗教の違いや障がいの有無による”見えない壁・スクリーン”がこの世から消え去る希望を今回のインクルーシブシアターで感じました。

様々な障壁を乗り越えて今回の上演を果たしたホスピタルシアタープロジェクトの方々、会場を提供してくださったコミュニティカフェななつのこに心の底から感謝致します。
本当にありがとうございました!

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