食欲の秋。 3年ぶりの「ニルカフェ」へ

台風15号が近づいている。
シルバーウィークの9月の連休は前半は台風14号で出鼻を挫かれ、後半も台風15号が関東に接近しつつある。

私のSNSには飲食店のアカウントはほとんどない。食べ物を投稿したのはカップ麺や駄菓子、自分で作った訳の分からない料理くらいだ。
ようは食にあまり興味がないのだ。
グルメでないのは幼少期からの食育の賜物だ。
何を食べても美味しいと感じるバカ舌に高価な食事は不要だ。
食事は体を動かすための燃料ぐらいにしか思っていなかったのだ。

そんな私が食事で感動したことがある。
グルメレポーターでない私はそれをどう表現してよいかわからず、「あ、美味しい。」「美味いなあ。」を交互に連呼していた。
それは3年前、コロナ前に遡る。
友人に誘われるままに入ったニルカフェでのことだ。
(過去記事)

この時から間もなく忌わしいウィルスが世界中に蔓延し外出を控える日々が始まり、
ニルカフェがまた行きたいお店ナンバー1のままコロナ禍の日々に突入して行った。

飲食店が軒並み打撃を受け続けたこの三年間。Instagramでニルカフェの投稿を拝見するたびにホッとしたり、美味しそうな写真を見て食事に行けないもどかしさを感じたりした。
食べに行けない人に対する配慮や思いやりのカケラもない美味しそうな写真の数々。
「コロナが明けたら食べに行こう」
我が家ではこの合言葉でコロナ禍と癌治療を乗り越えることができたのだった。

そしてようやく再訪の機会が訪れた。

天気予報は台風。交通手段である電車の遅延や運休があればキャンセルすることになってしまうので予約は入れていない。
こんな天気では満席にはならないだろうし。
電車に乗ってから伺うことをニルカフェのInstagramのメッセージに残した。
開店前の忙しい時間だ。返信を期待してはいなかった。

その後にどうしても行きたいイベントがあったのでランチタイムど真ん中の12時に到着予定となってしまった。
まあ大丈夫だろう。こんな天気だし。
ムギコはスマホでニルカフェホームページの本日のランチメニューを見ながら、これ美味しそう!デザートはこっちかな?などと娘と2人で盛り上がっている。
前回は娘がまだ4歳の時であった。当時より身長は20センチ、体重は1.5倍、態度は18倍程大きくなっている。
ただ多少の分別はついてきたようでむやみに泣き叫んだりはしなくなっている。
「外食が楽になったなあ」
こんなところにも成長を感じる。

Instagramで繋がっているとはいえ常連客でもなんでもない三年前に一度来店しただけの存在だ。
こちらが一方的に想いを募らせているだけで、向こうは覚えてない可能性が高い。
フラれた時のダメージを減らすための心の準備をしていると、スマホがブルッと震えてメッセージの着信を通知した。
(テーブル確保して待ってまーす。大きくなったリオちゃんに会えるのを楽しみです!)
ニルカフェからの嬉しい返信であった。

本厚木駅に到着した時には分厚い雲がかなりの速さで空を流れていた。雨がポツポツと落ち始めてきたので娘にレインコートを着せる。
保育園の時はツノのついた怪獣のレインコートであったが、小学校入学を期に濃紺のレインコートにチェンジした。私立校の学校指定品のようなシックでアダルトなそれは母子共にお気に入りらしく、ちょっと曇っただけで着せたがるし着たがる。
確かに育ちが良さそうに見えなくもない。
「雨が降ってきたら濡れちゃう。急がないと!」
道に迷ったら許さない目付きで私を見る二人。
レインコートの用途をよく知らないようだ。
逆らってもロクなことにならないので、いつもどおり黙って従う。
駅を出ると3年前の記憶を頼りに足早にお店へと向かった。
目印の公園はすぐに見つかったが、記憶にある植物に呑み込まれたような外観のお店が見当たらない。
「あれ?この辺りだったはず、、、」
移転などはしていないはずだが。
危うく通り過ぎてしまうところで気がついた。
驚くことにあれだけあった植物はキレイサッパリなくなっていた。
どうやら換気効率を上げるために撤去したようだ。これはこれでクラシックカントリー風で素敵な構えだ。
店先でウロウロしているのを見てショートヘアの女性が飛び出してきた。フォンテーヌさんだ。
「リオちゃーーん」
三年の歳月など一瞬で跳び越してしまった。
フォンテーヌさんは三年前と少しも変わっていなかった。ショートヘアーは奇しくもムギコとほぼ同じスタイル。ムギコは仲間と出会えたように嬉しそうだ。

店先で久しぶりの対面を果たし店内に案内された。
あら、ほぼ満席の盛況ぶりだ。
三密防止のため席数を減らしていると聞いていたが、席を確保してもらってなければ残念な結果になっていたかもしれない。

電車の中で散々メニューを見ていたくせになかなか決まらないムギコ。
私はブッダボウルに決めていた。が、パスタも美味そうだ、いやカレーという手もあるか。
なんだかんだで私もメニューをめくっている。
「決まった?」
少しイラッとした口調でムギコが問う。
(あなた待ちだったんですけど!)
心の中で抗議した。窓にほど近い席は明るく、楽しげな店内の雰囲気と相まってギスっとしかけたテーブルの空気は霧散した。
私はブッダボウル、ムギコはガパオライスをチョイスした。
ニルカフェのInstagramでしばしば見かけていたブッダボウル。日本語にすると「仏丼」かな。
とにかくてんこ盛りの生野菜に豆や果物、肉・魚が隠されており、最深部にライスが鎮座している。
健康診断で LDH(悪玉)コレステロール値がかなり高い結果となり、
「LDHコレステロールが高いねー。」という医師に、
「LDH?っていうとエグザイル的なヤツですか?」と答えたのが気に入らなかったのか、散々脅かされた。それからなるべく健康的な食事を心がけている私にはぴったりのメニューだ。
明らかに鮮度の良い野菜の山にフォークを入れる度に様々な副菜に出会うのも楽しい。
普段野菜はスーパーの見切り品と決めている私には野菜の鮮度に敏感なのだ。
ムギコのガパオライスは前回私が食べたメニューで美味さは確認済みだ。
娘はリンゴジュースを一気飲みしていやがる。頼むからもっと味わってくれ。
娘とシェアしながら食べたが充分なボリュームである。
だが、三年分の欲求不満はまだまだ解消されない。デザートにも一矢報いなければならない。
季節の果物を巧みに使った数々のデザートには定番というものはなく、ケーキやトフィーパイ、パフェなど様々にアレンジされている。
この日は地元産のブルーベリーをふんだんに入れたチーズケーキをオーダーした。
美味しいに決まってる。

私のがラストピースだったようで他テーブルのお客さんは品切れを告げられていた。
ムギコのイチジクとアーモンドのケーキも絶品であった。
胃袋が美味しいものだけで満たされた我々はしばし恍惚の表情で各々自らのお腹をさすっていた。
この間も窓の外には空席を伺うお客さんが数組来店していた。
食器を下げにきたフォンテーヌさんからA4サイズの一枚の紙をいただいた。
「このイベントに行くんでしょ?楽しんできてね!」
まさに今から参加しようとしていたイベントのチラシであった。
我らがリスペクトしてやまないNPO法人ハイテンションのイベントである。
チラシにはニルカフェのスタンプが押してある。近郊のお店にスタンプラリーのイベントを仕掛けていたのだ。

今回のニルカフェ再訪は福祉とは関係なく、至福のランチでお腹を満たすことを目的としていたはずだったがとんだ思い違いだと気づいた。

ハイテンションの地域に根差した障害者福祉活動の中にいつのまにか巻き込まれていたのだ。
そして気づいた。こんな天気の中、なぜこんなに来客が多いのか。

ハイテンションのイベント活動が地域に経済効果をもたらしているのを目の当たりにして全身に鳥肌が立つ。
ニルカフェ、ハイテンション、お客さん、三者がまさにWIN WIN WIN状態だ。
恐るべし厚木。
慄きながら退店しイベントに向かうことにした。
よほど動揺していたのだろう。大切なレインコートを席に忘れてしまった。
まあいい。取りに行くというまた訪れるいい口実ができたというものだ。

今度は何を食べようか。
Instagramを見ながら今日もニルカフェに思い馳せるのだった。

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