娘の副籍交流を終えて・・・。

先日、副籍交流に行ってきた。
支援学校に入学したリオは地域の小学校に”副籍”というポジションを置いている。
地域や学校によって様々なようだが、我が家の場合は希望すれば年2回、公立小学校の普通級に4,50分行くことができるという。
4月の入学当初に希望するか否かを聞かれ、
「はぁ?それっぽちで交流なんて図れんすか?月イチとかダメなんすか?」
と聞いてみたが、言い終わる前に強めに「無理です!」と言われちょっとカチンときて、一瞬断りそうになった。なんとか思い留まり(どうせ文科省の指導要領か何かに書いてあるから仕方なくアリバイ作りするために言っただけで、本気で交流を薦めてるわけじゃねえな)と思いながらもへそ曲がりな私は副籍交流を申し込んだ。
「どうぞ宜しくお願い致します。」
(訳:見せてもらおうか!定型発達の小学一年生の授業とやらを!)
気分はアムロのガンダムに挑むシャア・アズナブルだ。
夏休み前に先方の小学校の校長先生・担任の先生、コーディネーター、支援学校の担任との面談があり、副籍交流の日時や授業内容の打合せがあった。
沢山の先生方を巻き込んで随分大袈裟だなと思いながら打合せを終え、
「お父さん、何か言い残すことはありますか?」と問われた。戦線布告のチャンスだ。
「こちらが何かを得られるとは思いませんが、支援学校という場所があり障害を持つ子どもが世の中に居るという事を健常な子ども達が知る機会になれば幸いです。」
(訳:ぶっちゃけ、これっぽっちの時間と回数でまともな交流なんて期待してません。)

月日が経ち、いよいよ第一回目の副籍交流の日がやってきた。
ホームルーム後1時間目が副籍交流の時間だ。廊下で待機する私と娘。
いつもと違う授業に教室の中はざわつき、換気のために開け放たれた窓から心地良い風が子どもたちの声と共に吹き抜ける。
娘は緊張の面持ちでずっと下を向いている。
(少し可哀想だったかな。。。)
支援学校でのクラスメイトは4人しかいない。
いきなり10倍近い生徒と同じクラスになるのだ。
もっと大勢の観客が居るステージでは緊張する素振りなど見せないのだが、不思議なものだ。
若い女性の担任教師に入室を促され、渋々教室に入る娘。
どよめき、歓声が上がる教室。ビビる娘。
クラスメイトの反応は決してネガティブなものではなかった。
「副籍交流」という非日常への期待感、特別なイベントに対する興味、普通授業を回避した喜びが入り混じっていた。
そんな中「リオちゃん!会いたかった〜!」「やっと会えた!嬉しい!」と数名の生徒が声を掛けてくれた。

シーンとした教室の前に立たされ、好奇の目に晒されるなか居心地の悪さに押し潰されそうになりながら自己紹介する様を想像していた私は少し驚いた。

担任の先生は今日「副籍交流」で娘が来ることを1カ月前からクラスメイトにアナウンスし、ことあるごとに意識付けをしていてくれたようだ。
小学1年という思春期前だからだろうか男子女子ともに娘に否定的な素振りを見せる生徒は1人としていなかった。

はしゃぐクラスメイトを懸命に制しながら担任教師は私に自己紹介を促す。先生って大変そうだな。
私は事前に用意した(支援学校の担任が作成してくれた)A3サイズの紙芝居的な「リオちゃんの紹介」を使って喋れない娘に代わり自己紹介をした。
円形に並べたイスに座ったクラスメイト達は皆、興味深そうに聴いてくれた。
自己紹介を終えると全員で校歌を歌ってくれ、その後ダンスを披露してくれた。
娘の為に一生懸命練習してくれたのだろう。そう思うと私の中に僅かにあった敵愾心みたいなモノがみるみる溶けていった。
本来歌もダンスも大好きな娘だが、身体を硬直させたまま下を向いて私の手を強く握っている。
次はイス取りゲームだ。ルールがわからない娘は音楽に合わせて回るクラスメイトに挟まれ俯きながらトボトボと歩いている。
音楽が止まりクラスメイトが嬌声をあげて空いているイスを奪い合う中、ただ立ち尽くす娘。
あっという間に空席は無くなり娘は当然ゲームから最初にリタイアだ。
と、思いきや「リオちゃん、ここ座って!」と1人の女の子がイスを譲ってくれた。
キョトンとしたままイスに座る娘。私は心の中でありがとうと手を合わせた。
最後の1人になるまでイス取りゲームは続いたが、音楽が止まる度に数名の女子が娘をエスコートし、時には「あんたちょっとどきなさいよ!」と男子を排除したりしてイスを確保してくれた。結果、娘が優勝。
徒党を組んだ女子の恐ろしさを垣間見た。
この過程で娘は少し笑顔を見せてきた。
次のフルーツバスケットは少し難易度が高く、他のクラスメイトが楽しそうにやっているのをニコニコ眺めているだけだったが、最後のバクダンゲーム(輪になって音楽に合わせてボールを手渡し、音楽が止まった時にボールを持っていた人が負けらしい)は足を踏み鳴らしながら楽しそうに参加していた。
あっという間に時間が経ち、お別れの時がきた。授業後の休み時間で他クラスの生徒たちが廊下を行き交う中「楽しかった!リオちゃんまた来てね!」「明日もおいでよ!」「毎日来て!」と口々に別れを惜しみ、下駄箱まで送ってくれた。中には自宅で折った折り紙をプレゼントしてくれた女の子もいた。
自転車に娘を乗せ支援学校へ向かいながら私は自分を恥じた。
「どうせ云々、、。」という気持ちを持って臨んだ私の方にこそバリアが存在していたのだ。
クラスメイト達からはそんな排他的なバリアは一切感じなかった。
どうすれば一緒に楽しめるかを本能的に考え、娘をサポートしていた。副籍交流は初めてだという担任教師の根回しや入れ知恵は無かっただろう。
「たったの4,50分」はとんだ思い違いだった。
私自身とても実りある意義深い時間であったし、クラスメイト達にとっても意味のある時間だったに違いない。1カ月のあいだ「副籍交流」の為にダンスの練習をしたり、様々なゲームを考えたりと折に触れ娘のことを思ってくれていたのだ。
「副籍交流制度」を考えてくれた行政庁や、支援学校の先生、受け入れクラスの担任の先生やクラスメイトには感謝しかない。

来年の次の副籍交流がとても楽しみだ。
すでに成長発達に差があることを改めて実感するとともに、今後はその差がどんどん開いていく。
保育園では同室であった健常な子ども達と進む道が別れ、違うゴールへ向かうのが特別支援教育と捉える向きもあるが、時には副籍交流などを通して互いを知り理解を深めることが大切なのだ。
別々の道を進むのではなく、みんなで進める大きな幅の広い道をつくることが我々大人の役目なのかもしれない。

背中で歌う娘のデタラメなメロディを聞きながら、狭い歩道の上でゆっくりとペダルを踏む私はそんなことを思うのだった。

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