鼓動を重ねたリズムセッション|ともくんみゅーじっくすたじお & KILIG

ある日、ともくんみゅーじっくすたじおの原嶋さんからメールを頂いた。
音楽特化型民間学童KILIGで合同イベントを行うので来ないかとのお誘いである。

ともくんみゅーじっくすたじおさんとは、自閉症を持つ息子さん”ともくん”がドラムプレイに才能を開花させたことをきっかけにご両親がスタートさせたドラムを中心とした音楽教室だ。
活発なその活動は日頃からSNSで拝見しており、その親バカとも思えるとも君への溺愛ぶりに強烈なシンパシーを感じていた。

なんたる奇遇。実は合同イベントのお相手KILIGさんもCOMUGICOに掲載させて頂いている民間学童保育だ。
KILIGさんの活動場所は私の住む街と同じ市内ということもあり、KILIGさんにはいつかご挨拶がてら見学に行きたいと思っていたので、二つ返事でメールを返信しワクワクしながら当日を待った。

小学生の頃、C-C-Bというドラム・ボーカルバンドがロマンチックを誰かに止めてもらう歌をヒットさせていたが、それ以降はドラムやベースのリズム隊は割と地味なポジションのイメージだ。(←ゴメンなさい、私観です)
イカ天世代の私の周りには自主的にドラムを志す人は少なく、皆ギターを弾きたがった。
我がバンドのドラムはリスペクトするドラマーに石原裕次郎をあげる変わり者で、3分の曲を2分にしてしまうスピードスターであったため、
「早えーよ!!!」
ボーカルが歌詞の合間に絶叫していた。
そんなことを思い出しながら線路沿いの住宅街の迷路をスマホの道案内を頼りに進む。

時間ギリギリだ。少し遅れてしまうかもと事前に連絡は入れていたがなんとか間に合いそうだ。
今回声をかけてくださった”ともくんみゅーじっくすたじお”さんも”KILIG”さんも初対面だ。
遅刻による悪印象は避けたい。
閑静な住宅街が続き迷子になりかけた時、とある民家の塀に音楽メインの民間学童After school KILIGの看板を見つけた。
外観はごく普通の一戸建て住宅だ。
「こんにちは!」KILIGさんちの玄関で元気に挨拶をする。いつものCOMUGICOマーク入りウェアでないので先方の認知に多少の時間がかかる。
一瞬「誰?」的な間があるのは割といつものことなので最近は慣れてきた。
「はじめましてCOMUGICOです。」
「あ、いらっしゃーい!どうぞ、どうぞ!」
と促され玄関へ入ると、子ども達の靴がたくさん並んでいる。
奥からはガヤガヤと楽しそうな雰囲気が漂い、私はマスクの中で思わずニンマリしてしまう。
沢山ならんだ子どもの靴はなんだかとても嬉しい気持ちになるのだ。
中に入るとさすが音楽メインと銘打つだけあって様々な楽器があちこちに置いてある。
広めのスペースの奥には白いピアノと電子ドラムのセットが置いてあり、傍らにはベージュのキャップを目深に被ったともくんがいた。
KILIGの三宅さん、ともくんの親御さん、講師のあやか先生にご挨拶し、ともくんに紹介していただいた。

「はじめまして。」と挨拶をすると、ともくんはサッと右手を出し握手をしてくれた。
「宜しくお願いします!」
と礼儀正しく明るい。
自閉症と聞いていたのでなんとなく応対が難しいのかなと思っていたが全くそんなことはなかった。
今回が初めてのスタジオ外での活動と聞いていたが、多少の緊張より楽しさが勝っているようだ。初めての場所で知らない人達とワークショップをするのは相当なストレスがあると思うが、ご両親とあやか先生が一緒にいる安心感もあるのだろう。

合同イベントのプログラムは大まかに
・ともくんの自己紹介
・デモンストレーション演奏
・あやか先生のドラムレッスン
・みんなでリズムセッション
となっている。

ともくんは予め書いてきた自己紹介を大きな声で読み上げる。とても簡潔にまとまっていてわかりやすい。
私のブログ記事とは大違いだ。
デモンストレーション演奏はみんなが知っている曲をスピーカーで流し、それにあわせてドラムを叩く。時折スティックをクルクルと回す小技もカッコイイ!
子どもたちはともくんのドラムプレイ見惚れており、知っている曲になると歌い出す子もいた。

あやか先生のドラム講座は8ビートの叩き方レッスンだ。
①右手
②右手+右足
③右手
④右手+左手
の動きを繰り返す練習だ。
なかなか難しい。

小学生の時に何かの入場行進で何度やっても右手右足が同時に前に出てしまっていた私。50年間やったことのない動きは頭で考えながらでは到底追いつかない。
しかし柔軟な子どもたちは習得が早い。
皆があやか先生に褒めてもらっているのを悔しい気持ちで眺めるしかなかった。

リズムセッションでは様々な形のタイコやトライアングルなどで、全員が音楽に合わせてリズムを叩く。
色々な音色が一つのリズムを刻んだ時、まるでその場にいる全員の鼓動が重なるような一瞬があり、その鳥肌たつ快感を全員が共有できたと感じた。顔を見合わせる子どもたち。
「もう一回やりたーい!」と声があがる。

その後、希望者を募ってドラムセットを叩く時間もあり、数人の子たちがあやか先生とともくんに叩き方を教わった。
なかなかドラムセットから離れたがらない男の子や瞬く間にコツを掴む女の子。
みんなそれぞれ充実した時間を過ごし、あっという間に終了の時間となってしまった。

いつまでも留まっていたい空間であったが、お迎えの親御さんが来はじめたので退散することにした。
外はもう暗くなり始めていた。

“ともくんみゅーじっくすたじお”も”KILIG”も障がいの種類は違うが、我が子の障がいをきっかけとして活動をスタートさせた。
自らの子どもを通じて障がいの世界を知り、それぞれ音楽というツールで関わっているという共通点がある。
音楽活動が子どもの成長にとって有益な効果があることを再認識するとともに、2つの団体のコラボレーションは単純な足し算ではなく、掛け算のように何倍もの相乗効果があったと感じた。
このような活動連携の一助となることがCOMUGICOの存在意義でもあるのだと改めて思いながら、心地よい8ビートのリズムを反芻しつつ駅に向かう緩い登り坂を歩くのであった。

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