Bor・n発達障害講座 Vol.7「 障害児の育児・父親としてのかかわり・支援環境 」

20251023

柄にもなく我が家のコムガールが通う特別支援学校のPTA活動に参加させて頂いているが、そこではじめて特別支援学校を取り巻く地域の方々が長きにわたって応援してくれていることを知った。
協定を結んでいる隣接した国立大学の教授、隣接マンションの管理組合、地区協議会、市行政の福祉担当者や特別支援学校PTAの歴代OBなどこんなにも多岐に渡る人々が陰ながら見守り応援してくれていることを知った時は涙が出るほど嬉しかった。
このネットワークは月に一度定例会があり、子ども達のためにどんな支援ができるかを協議しているのだ。

コロナ前までは様々なイベントを活発に行なっていたことを過去の記録から窺い知ることができるし、今ほど放課後ディサービスが拡充していなかった当時は放課後や土曜日の余暇活動の貴重な機会だったようだが、今はこの組織のことを知る保護者は多くない。
私がPTA活動に参加して最も有意義だったと思うのはこのネットワーク組織を知り、参加できたことかもしれない。

年度が始まってまもなく、定例会の時に一人の重鎮メンバーの方に
「秋に講演会を企画するんですけど、お願いできますか?」と声をかけてもらった。
私は「日程が合えばもちろん伺います。どのような講演なのですか?」と答えたが、その御婦人はニッコリと微笑んで「あなたが講演するんですからお好きなテーマでどうぞ。」とおっしゃった。
基本的に頼まれたことは全て引き受けるTHEイエスマンを自称しているのだが、コイツは少し荷が重い。人見知りではないが、大勢を前におしゃべりした経験はほとんどないし、過去に一度パネリストとして20分程度人前で喋った時は頭が真っ白になって滝のような汗に溺れかけた。「少し考えさせて下さい。」そう言おうと思った私の口から出たのは「もちろん私でよければ喜んで!」自分のイエスマンぶりに呆れるばかりだ。

好きなことを喋っていいということなので、日常的に思っていることや近年の体験をとにかく書き出してみることにした。
以前に書いた記事やSNSに投稿した記録などを読み返してみると「あぁそんなことあったなあ、当時はそう思っていたんだな。」など当時の記憶が甦ってきた。
まだまだ先だと思っていた矢先、主催者(早稲田大学校友会 調布稲門会 ボランティア・ネットワーク Bor・n(ボーン))の方からチラシ作成のため自分の写真と講演のタイトルだけでも先に教えてほしいと連絡があった。
演題「障害児育児における父親としてのかかわりと支援環境について」
これなら何を喋ってもあまり的外れにはならないんじゃなかろうか。
無難な写真とともに無難な講演タイトルを返信する。まだ内容も決めあぐねている最中だったので仕方ない。
すぐに送られてきたチラシの草案の笑顔の私と講師の文字に赤面してしまう。しかも500円と価格まで乗っている。有料なのか、、、私のおしゃべりに対価が発生していることに愕然とする。
料金を支払って聞きに来てくれる人がいる以上テキトーに出まかせを喋るわけにはいかない。
まだ時間があるとはいえしっかりと準備しなければならないと改めて気合いを入れなおした。
人様に講釈を垂れるほどの経験も知識もないのは自分が1番わかっているため、あくまでも自分の経験したことと自分自身の考えを喋るしかないが、講演で喋る以上は裏付けをとらなければならない。
思いつくままキーボードを叩いて講演の原稿を書き上げる。台本無しで一時間以上喋り続けるなんて絶対に無理なことは以前のパネリスト経験から学習済みだ。
とにかくなんとか言いたいことを書き終え、推敲しながらデータなどをネットで改めて調べてみるとあちこちに私の思い違いや勘違いが散見された。
今回はスクリーンを使って写真やイラストも投影できるとのことなので、説明資料の作成にも力が入る。

・家族のこと
・麦のこと
・特別養子縁組のこと
・リオのこと
・特別支援教育のこと
・障害児者を取り巻く社会環境のこと
・COMUGICOのこと

なるべく簡潔でわかりやすいモノにしなければと、あまり得意でないパワーポイントを駆使して資料を作成した。

なんとか台本と投影資料を作り終え、家族が寝静まった深夜にひとり密かに予行演習をする。とかく早口になってしまうため、ゆっくり喋ることに留意しながら、パワポのスライドを操作するが意外と難しい。
「・・・ご清聴ありがとうございました。」
ストップウォッチを止めると1:08。なかなかいいタイムだ。残りの30分弱は質疑応答で良いだろう。
大きくため息をついて、一仕事終えた余韻に浸った。

キャパは35名だが、事前予約必須ではないため、当日何人来るのかわからない。あまりたくさんでも上がってしまうし、少な過ぎても主催の方に申し訳ない。
あまり自分で宣伝するのも如何なものかという気がしつつも、何もしないのも違う気がする。
とりあえず、それとなく学校関係の保護者へ案内を出したり、両親に声を掛けたりした。

いよいよ当日。かなり早めに自宅を出た。徒歩で10分とかからない会場であったが、昼ごはんを済ませておかないと途中でお腹が減ってしまう。とくに娘は空腹を我慢することを知らないので満タンにしておくべきだろう。
何を食べようか迷っているうちに時間がなくなり、結局コンビニのイートインでおにぎりを食べる。ただのお散歩だと思っている娘はゴキゲンでフライドチキンに齧りついているが、私はすでに少し緊張し始めている。
悠長に食事を楽しむ娘と近くの席にいたおばさまと話しが弾んでいるムギコを残し、私は一足先に会場へ向かうことにした。
会場のある建物の下では市民まつりのような催しが開催されていてずいぶんと賑やかだ。たまに訪れるこの建物は中に入ると大きな吹き抜けになっていて、1階のホールではよくコンサートなどが開かれている。
会場のあるフロアまでエレベーターで上がり、いくつかある集会室を見渡すと私が講演する部屋はすぐに見つかった。
主催者さんとその旦那様が会場のセッティングはあらかた終えてくれていたのであまりお手伝いすることもなく、借用したPCで作成したスライドを投影する準備をした。
だいたいうまく映せなかったり、データを入れたメディアを忘れたりと直前のトラブル(というか私の不注意)が多々発生しがちだが今回は無事スクリーンに資料が投影されたので一安心。
しばらくしてムギコと娘が現れたので、主催者さんに紹介し着席を促すが、最前列の私の真正面に座る娘。なんだか気まずいので後ろに行くようお願いするが頑として動かない。
「パパ、せんせーするの?せんせーするの?」
ニコニコしながら尋ねる娘にもう何も言う気がしなくなる。
その横ではムギコが動画を撮ろうとアングルを模索しながらウロウロしている。後ろの受付には人が並び始めており、我が両親の姿も見えた。枯れ木も山の賑わいである。
講師っぽい襟のあるシャツを着ることも考えたが、講演の中でCOMUGICOにも触れるのであえてコムTで臨むことにした。
いよいよ時間となり、講演が始まってしまった。
座席は8割がた埋まっており、目線を上げると誰かしらと目が合ってしまうので視線を下に向けて原稿を読むか、スクリーンを眺めながら喋っている自分がいる。
喋りとスクリーンをシンクロさせるのがやはり難しい。気がつくとスクリーンを置き去りにして喋ってしまう。
アドリブっぽい部分は客席に視線を向けてみるがやはりなんだか照れ臭いし、手を振る娘を見ると反射的に手を振り返しそうになってしまったりしたのですぐに原稿に目を戻す。
ふと机上のスマホに目を向けるとまだ1/4なのに30分以上使ってしまっている。ヤバイ。このままではタイムオーバーだ。不自然にならないくらいに喋るスピードを上げてみるがなかなかタイムが縮まらない。
もうなりふり構わずスピードを上げる。ゆっくり喋る練習はなんだったんだ。果たして私の主張は伝わるのだろうか、、、そんな疑問を振り払いなんとか台本を読み切り、15分ほどの質疑応答時間を設けることができた。
肩で息をしながら質問を促すといくつかの質問を受けたが、真剣ながらも優しい聴講者の方々ばかりで意地悪な質問や難しい質問は一切無かったのがとてもありがたかった。
時間になり主催者の方が終了を告げると、待ってましたとばかりに娘が駆け寄ってきた。
「お疲れ様」ムギコは私に労いの言葉を掛けつつ、モジモジしている。
「動画途中で電池切れちゃった、、」
自分の振り返り用に録画を頼んでいたのだが、まあ振り返るまでもなくワチャワチャな講演であったので録画が無くても構わない。むしろ削除したいくらいだ。
片付けをしていると、数人の方々から「よかったですよ!」「良い講演でした」と声を掛けて頂き、とても慰められる。
その中にはCOMUGICOに掲載させて頂いているお店の方もいてとても嬉しかった。

その後、関係者の方々と建物1階の喫茶店でお茶を飲みながらの懇親会があり、様々な話を聞くことができたのもありがたく、とても有意義なひとときであった。福祉のプロの方や私よりも遥かに経験値の高い方々ばかりを前に講演をしていたことに赤面の至りで穴があったら入りたくなってしまった。
後日、当日のアンケートを主催者の方に共有して頂いたが、そのメッセージも前向きなものばかりでとても励みになる。
もっと上手く伝えられたらとか、もっと顔を上げて話せたら、時間配分をこうすれば、と反省点はたくさんあるがこの講演準備期間に学び直しができたことや、たくさんの方々と知り合えたことなど実に多くの収穫を得ることができた。
そう言えば以前パネリストとしてお話しした時のこともその後の自分自身に良い意味で大きく影響した経験であったと思い出す。

果たしてもし次に今回のような講演依頼があったらどうしよう。
私の中のイエスマンがさらに勢力を増していることに気がつくのだった。

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