arTeaTreaTのマザラジオ in ULALA

2023年1月22日(日)
10年に一度の寒波が来ているという。
ここ数日は日差しがあっても肌を切り裂くような冷たい風が吹いていた。
窓の外は晴天だが騙されてはいけない。

今日はarTeaTreaT(アートイートリート)さんのラジオインタビューの収録があるのだ。
昨年、みんなの広場でのイベントにてご挨拶させてもらった際にオファーを頂いたのだ。

arTeaTreaT(アートイートリート)とは『art: 表現すること』『eat: 味わうこと・いだだくこと』『treat: 手当て・労うこと』をテーマに、様々なイベントやワークショップを通じて支援を必要とする子どもとその家族が、地域の人とともに、居心地がよくご機嫌な日々を創っていくための活動をしている団体だ。
東京都世田谷区を中心に活動する「NPO 法人子育て支援グループ amigo」が活動母体だ。

ラジオといえば、三宅裕司のヤングパラダイスやオールナイトニッポンを布団に潜ってコッソリ聴いていた小学生時代を思い出す。
AM1242のニッポン放送一択で聴いていた。
顔の見えないパーソナリティの軽妙なトークとトップテンやザ・ベストテンというTV番組とは少し違った音楽(ロック)が真っ暗な布団の中で少年期の私を背伸びさせた。
そんな私は潜在的にラジオへの憧れもあり、そのオファーを喜んで受けた。

今日の収録に先立ってメールを頂いており、そこには事前にインタビューの質問が記載され回答を記入できるシナリオフォームが添付されていた。
今まで何度かメディア取材を受けたことがあるが、話が脱線しがちでなかなか本線に戻れなかったり、ムギコとの記憶違いなどで取材の最中に口論になったりとインタビュアーを困らせてしまうこともあったが、事前にこうしたシナリオがあればそんなこともないだろう。
インタビューの主旨は様々な障害やそれについての困りごともなど、知らないことを知っている人に聞いてみよう、そしてみんなでシェアしようという「わたしに出来ることはなんですか?」という企画だという。
どうやら知っている人と思われてしまったようだ。
まずいな、実は私が知っていることなどほとんどないなんて今更言えない。。。

なんとかシナリオにCOMUGICOのコメントを追記し、メールを返信した。

ラジオ収録をする場所は世田谷区のULALAという一戸建ての建物だ。
以前の砧公園”みんなの広場”でのイベントでarteatreatさんとお話ししていた私は、脳内でインタビュー場所=砧公園近くと勝手に認識しており、「ULALAの場所はどこかな?」と聞いてきたムギコに「砧公園だよ」とテキトーに回答していたため、タクシーの運転手さんに「砧公園」と行き先を告げたらしい。
走り出したタクシーの中で改めてULALAを検索すると、場所は砧公園ではなかった。
「すいませーん。行き先ちょっとだけ違ってました。変更をお願いします!」
と正直に運転手さんに告げた。
「チッ!」と舌打ちが聞こえた方に目を向けるとムギコが睨んでいる。おーこわ。
首をすくめ目線を合わせないように窓の外に目を向けるが、ガラスに反射したムギコと目があってしまった。
真ん中に座る娘は最近の口癖「パパだいっち、ママはだいっちない(パパ大好き、ママは大好きではない)」を念仏のように繰り返し、ムギコの神経を逆撫でして楽しんでいる。
不機嫌さを増すムギコをニヤニヤしながら挑発し続ける娘。矛先が私に向かう様まで含めて楽しんでいるのだ。すえおそろしい。

しなだれかかる娘の圧と、ムギコから発する不機嫌な圧で押し潰されそうになりながらも、優越感でわずかに緩む口元をさりげなく隠した。

30分ほどのドライブで目的地に到着した。
明るく可愛らしい色合いの一戸建てに小さくULALAの文字があり、見覚えのあるarTeaTreaTの旗も掲揚してあった。
少し広い道を挟んで向い側には馬事公苑の木々が立ち並んでいる。季節柄落葉しているが、春からは緑が気持ちよさそうだ。
タクシーの音に気がついたCREWの方が、扉を開けて招き入れてくれた。
玄関を入ると数名のCREWの方々が「こんにちは!」とにこやかに迎えてくれた。
arTeaTreaTではスタッフさんをCREW(クルー:乗組員)と呼んでいる。カッコイイので真似したいがCOMUGICOには残念ながらスタッフがいない。
窓から差し込む日の光が暖かく照らしている真新しい床のカーペットで、仰向けになった筋ジストロフィー脳性麻痺の男の子が気持ち良さそうに足のマッサージを受けている。
「足の先がどうしても冷たくなってしまうんですよ」
そう言いながらマッサージを続けるCREWのママさんは穏やかな眼差しで男の子を見つめている。
世田谷区には公設・私設併せて数多くのこうした子育て支援の場があるという。
核家族化が進み、近所付き合いが希薄な現代では出産後に途方に暮れてしまう母親は少なくないのだろう。
ぎこちない手つきで赤ちゃんを抱いた母親が涙ぐみながら訪ねてくることもあったという。
障害を持つ赤ちゃんであればその不安は計り知れない。
カウンターの上部にはCREWの紹介写真がずらりと並んでいた。
ほとんどの人は元利用者だという。当初は途方に暮れて施設の門を叩いた人が、先輩ママとなりCREWとして利用者に対応していくのだ。
素晴らしいシステムだ。
この日はまだ午前中ということもあり、CREW以外は我々と先程の男の子だけであったが、コロナ前には足の踏み場がないほど混み合うこともあったという。
「そんな時は近くにいる人がよその子の面倒をみたりもするんですよ」
代表の石山さんは楽しそうに笑った。
聞きたいことは沢山あったが、今日は我々がインタビューを受ける側なのだ。
最初は若干緊張していた娘も、出してもらったオモチャがいたく気に入ったようでゴキゲンで遊んでいる。

「じゃあそろそろ始めますか?」
テーブルの上に円盤状のマイクが置かれた。
インタビュアーの石山さんが録音ボタンが入ると同時に私の頭の中でON AIRの赤いランプが点灯し、レバースイッチが押された。

「今回は、一般社団法人COMUGICO代表理事の小川琢也さん、パートナーの美樹さん、そしてお子さんのりおちゃんに「ゆるっとサンデー」という集いの活動にお越しいただいてお話しを伺っていきます。どうぞよろしくお願いいたします。」
と石山さん。

「よ、よろしくお願いします。」
ヤバイ、頭の中が真っ白になっていく。
狼狽して目が泳ぐのが自分でもわかった。
ムギコに目をやると、哀れみを含んだ眼差しが「こちらを見るな」と言っている。
け、携帯にシナリオがあるはずだ。携帯、携帯。
半笑いで石山さんをみながらテーブルの下をまさぐる。
沈黙の時間が続く。この際娘の騒ぐ声でもいいから音がほしい。ノイズプリーズ。
チキショウ、こんな時に限って大人しく遊んでやがる。
それより携帯だ。固いモノが手に触れた。
カンニングする中学生のようにテーブルの下に視線を落とす。
あぁ!ダメじゃん、電池切れてんじゃん!

薄れゆく意識の中、もうなにを喋ったのか自分でもわからなくなったのでインタビューのシナリオを公開することにしよう。

以下シナリオ

(arTeaTreaT石山さん)
COMUGICOさんとの出会いは、2020年のコロナ禍だったと記憶しています。
私たちが都立砧公園のインクルーシブ遊具エリア「みんなのひろば」でおさんぽの会を始めたばかりの頃、インスタグラムで告知していただきました。実際にCOMUGICOさんの記事を見てきました〜という方もいて、我々CREW
一同感謝感激したものでした。
小川さんもママとお子さんで遊びにきてくださって、嬉しかったです。
まず初めにCOMUGICOさんの活動についてお聞かせいただけますか?

(COMUGICO小川)
その節はお世話になりました。
COMUGICOが少しでもお役に立てたのなら嬉しいです。
COMUGICOは「支援を必要とする子どものための情報サイト」を運営しております。
全国の児童福祉に関係する活動をしている団体や個人を一元的に参照できるサイトです。
COMUGICO立ち上げのきっかけは娘の習い事を探していた時の出来事です。
ピアノ教室やダンス教室に問い合わせをしましたが、娘に障がいがあることを告げると体よく門前払いされてしまい、傷つき心が折れそうになる経験をする中、同じ障がいを持つ子どものママから
「うちの子が通っているダンス教室いいよ!一緒に行こう。」
と声をかけてもらったり、SNSで知ったピアノ教室がとても素晴らしく、ピアノ教室を探していた友人に紹介して喜ばれたりと、口コミ情報のありがたさや重要さを痛感しました。
同時に世の中には心が折れたまま孤独感に苛まれ閉じこもっている親子がいるかもしれないことに思い至り、障害を持つ子どもを受け入れてくれる習い事教室をまとめたら、傷つかずに習い事を探せると思い情報サイトを立ち上げようと思ったのです。

(arTeaTreaT石山さん)
ありがとうございます。
病気や障害のある子どもの保護者さんにとって、SNSが重要な情報源とコミュニケーションの場になっていると日々感じています、など
そしてそして、COMUGICOさんの活動の原点、原動力になっておられるであろうご家族について、自己紹介含めてお願いできますか?

(COMUGICO小川)
私は小川琢也と申します。49歳魚座のO型です。
普段は会社員として某ゼネコンに勤務しております。バリバリのガテン系の職人でしたが、6年ほど前に転職しました。
最近はCOMUGICOの活動が主な週末の過ごし方ですが、オートバイや山登り、音楽鑑賞が趣味でした。最近娘の影響でピアノを練習しています。
COMUGICOでは対外的なやりとりやブログ記事を担当しています。

妻の美樹も同い年です。IT関係の会社を経営しながら、自らもプログラマーとして医療関係の公益財団法人で日々働いています。
COMUGICOサイトの立ち上げ、掲載や情報発信などほとんど全てを1人でやっています。
ロゴマークやキャラクターのベースデザインも担当しています。
病的に人見知りなので黙々とパソコンに向かって作業するのは性に合っているようです。

娘のりおは7歳で、特別支援学校の一年生です。りおは4か月の時に我が家へ養子として来てくれました。ダウン症です。とにかく喜怒哀楽が激しいですが、特に「喜」と「楽」が激しいのでいつも楽しそうです。特有の合併症はありましたが、治療を終えてからは元気そのものです。歌とダンス、絵を描くことが大好きでネコのぬいぐるみを肌身離さず連れています。りおと亡くなった息子の麦がCOMUGICOの原点であり原動力です。

(arTeaTreaT石山)
ありがとうございます。
「社会的擁護」という言葉は、世間ではまだまだ認知や理解が追いついていない言葉だと思います。
仕組みが整ってくることはもちろん大切なことですが、それを待っている間に目の前にいる子どもたちの大切な一日一日が過ぎていきます。arTeaTreaTの活動はどちらかというと今できることをみんなの力でなんとかしよう!という仲間を集める活動になるといいなと考えているところがあります。
COMUGICOさんの使命も「子どもたちの現在と未来のために」ということだったと思います。

(COMUGICO小川)
その通りです。
認知や理解が進んでいないのは社会的養護が必要な子どもたちへの「配慮」や「プライバシー」といったデリケートな部分が多分に内包されているからだと思います。
行政による及び腰な公助では充分とは思えない部分もあります。私たちができること、私たちにしかできないことがあると思うので、少しずつでも社会的認知を進めていきたいと考えています。

(arTeaTreaT石山さん)
COMUGICOさん、団体名に込めた思いがきっとあるのではないかと思います。
どんな思いが込められているんですか?

(COMUGICO小川)
COMUGICOのネーミングについては、麦は健やかに育っていくために、「麦踏み」という試練があります。踏まれた麦はその試練によって一層逞しく育っていくのです。
亡き息子につけた名前の由来ですが、生まれながらに様々な試練を受けた子供達がそれを糧により強く健やかに育つ様を、試練を乗り越え実った麦が真っ白な粉末「小麦粉」に姿を替え、やがてパンやクッキー、様々な麺類などに変化していくことにイメージを重ねサイト名にしました。
じつは亡き息子「麦」の名前をこっそり(?)忍ばせました。
NICUで私達両親と医療関係者以外の誰とも会えずに亡くなった「誰も知らない麦」の名前を1人でも多くの人に知ってもらうことが実は最大の喜びなのです。
今後もCOMUGICOの屋号に誇りを持ち「麦」に恥じない活動を地道にしていきたいと思っています。

(arTeaTreaT石山)
COMUGICOさんの活動はwebサイトから色々見られますので、ぜひこのラジオを聞いた方にも遊びに行っていただきたいと思います。
それでは、最後になりますが、皆さんにお聞きしています。
我々arTeaTreaTができることってなんだろう?COMUGICOさんの視点からお聞かせいただけますでしょうか?

(COMUGICO小川)
娘の特別支援学校入学で普通小学校に通う子どもたちとの接点が減ってしまったことを実感しています。
支援を必要とする子どもたちのコミュニティはとかく大人の都合で効率よく「管理」するために一般社会と切り離されがちです。互いを知るため障害や病気を持つ子ども、社会的養護の必要な子どもたちと一般社会をアートや遊びで繋いで行って欲しいです。

以上

頭の中が真っ白になった私は実際に何を喋ったのか定かではない。
ムギコが怒ってなかったのでそう的外れな事は言ってなかったようだ。

今回、インタビューを受けるにあたってシナリオの回答を作成したのは、改めてCOMUGICOの理念や目標を再確認するよい機会だった。

寒風が吹く中ULALAをあとにするのに後ろ髪を引かれるのは室温の暖かさだけでなく、石山さんをはじめとするCREWの暖かさがその場を離れがたくさせているに違いない。
支援を必要とする子どもを育てていると、つい同世代の同じ障がいを持つ仲間と繋がりがちであるが、様々な経験を持つ先輩ママと交流できる場所があることはとても心強い。
ふと学生時代の部活を思い出した。
登山を主体とした活動は時として生命の危機を伴う。
何も知らない一年生にとって先輩達はとても頼もしく、また身近な目標でもあった。
自分が先輩となった時には後輩に自分の経験を余さず伝えることが使命と感じていた。
辛くキツイことの多い部活であったが、なぜか全て楽しかった経験として思い出に残っている。
育児を山登りに例えるのは安直すぎるかもしれないが、arTeaTreaTは不安と孤独に苛まれている新人ママが同じ経験をした先輩とだけでなく『art: 表現すること』『eat: 味わうこと・いだだくこと』『treat: 手当て・労うこと』を通じて社会そのものと繋がりを持つことのできる部活のような場所なのかもしれない。
頂きを目指す仲間は多いほど楽しい。苦難を共にした経験はきっといい思い出になるに違いない。
ULALAで出会ったCREWの方々の優しい表情がそれを物語っていた。

名称 arTeaTreaT(あーといーとりーと/アートイートリート)
活動地域 東京都世田谷区
WEB 公式サイト
Instagram @ arteatreat
Facebook @ arTeaTreaT
マザラジオ @ arteatreat-4
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