「Borderlessな子どもの世界」Borderlessな子どもたちと

梅雨明けといってももう随分前から猛暑日が続いていてもうとっくに夏がやってきていた。
休日はもっぱら午後に活動を開始する我が家なのだが、この日曜日は平日と変わらない時間に起床し、バタバタと出発の準備をはじめた。
都心のオアシス新宿御苑でBorderless Kidsさんの撮影会にお招きいただいたのだ。

Borderless Kidsさんは子ども達がそれぞれの個性を活かせる社会を目指すという理念に基づき、オリジナルデザインのウェアの販売や世界各地から輸入した遊びながら学び、できることが増えるような玩具やグッズを販売している。

COMUGICOに掲載させていただいたのは2020年の夏頃だった。
シンプルなのにインパクトのあるオシャレなアパレルやグッズにムギコ共々見入ってしまったことを思い出す。
「Borderlessな子どもの世界」という写真展を開催するにあたり我が娘にオファーをいただいたのだ。SNSのメッセージに小踊りして喜ぶムギコとそれを見て訳もわからずはしゃぐ娘。

撮影は Noel(ノエル)さん という方だ。
月末からはメキシコに移住してしまうらしい。
NoelさんのHPを見るとなんとも芸術的な写真が沢山紹介されている。
おすまし顔が最も苦手で常に爆笑しているか号泣している我が娘に写真モデルが務まるだろうか。
美しくアバンギャルドなNoelさんの写真に娘の姿を当てはめてみたが全く想像できない。
初対面の方に会うのがあまり得意ではないムギコであったが、好みのセンスがぴったり合ったBorderless kidsさんに会えることや Noelさんに娘を撮影してもらえる喜びが大きく、朝からハイテンションである。
ムギコに追い立てられるように家を出ると、思いのほか涼しく、まだ熱せられていない風が心地良い。
早起きは三文の徳を実感した。
お出かけが嬉しい娘はゴキゲンだし、電車は空いてるし良い一日になる予感がする。
少し早めに集合場所へ着いた。だいぶ気温が上がってきたが樹々や植物が多く気持ちいい。
フィトンチッドを思い切り吸い込み少しむせる。
大きな荷物を抱えた女性が手を振りながらこちらへ駆けてきた。Borderless kidsの代表だ。
はじめましてのよそよそしさは全くなく帽子の下のにこやかな表情は穏やかで実にフレンドリー。ムギコの緊張も一気に解けたようだ。
「皆さん、撮影場所に集まってるようなので早速行きましょう」
きれいなグリーンの芝生広場。樹々の間を抜ける風は爽やかだ。
枝ぶりのいい桜の木陰で他の参加者の皆さんと無事落ち合えた。
モデルは三人。車椅子の女の子とその友達、我が家の娘、たまたま皆同い年の小学二年生だ。
少し緊張していた娘もBorderless kidsさんの用意してくれたシャボン玉マシーンでゲラゲラ笑いながら芝生を走り回ってシャボン玉を撒き散らしている。
子ども同士もあっという間に打ち解けた。
大きなバッグに数種類のカメラを用意したNoelさんは子どもたちにポーズを要請したりせず、芝生の上を裸足で追いかけながらシャッターを切っている。
Noelさんは度々カメラバッグに戻ってきてはフィルム交換をしている。驚いたことに機材は全てフィルムカメラなのだ。
デジカメ全盛の時代に敢えてフィルムカメラを使うことにアートに対する姿勢を垣間見た気がする。
人物や風景を撮影するのではなく、フィルムが感光する刹那の光を映し撮ることが目的なのかもしれない。そんな「光」を感じる作品がホームページにたくさんあった。
印画紙を現像液から上げるまでどんな写真かわからないのも楽しみの一つなんだと思う。

モデルの女子二人は保育園からの仲良しだという。健常の子と車椅子の子の付き合いかたがとても自然で理想的だと感じた。
障がいがある人に対してはつい過剰に意識してしまうがこの二人はとてもナチュラルに対等な友人同士として接しあっている。
二人を見ているとインクルーシブや共生社会なんて言葉が陳腐に聞こえる。
その様子を目を細めて見守っている親御さんも明るく育児を楽しんでいるようだ。Borderless kidsさんのお子さんには会えなかったがきっとステキな環境で育っているに違いない。
「子は親の鏡」というが、親の姿もまた子どもを映していると思う。我が家も見習わなければ。

ひとしきり遊び回ってシャボン液がなくなり、いよいよBorderless kidsの服を着ての撮影だ。
どこかオールドアメリカンな雰囲気漂う七分袖のボーダー柄Tシャツが配られ、三人お揃いで着用する。裾がフレアしたAラインの型がステキだ。

Noel(ノエル)さん公式サイト Instagram:@ takako_noel

とてもおしゃれなトップス【Borderless Kids Original Design】

美形モデルの二人と比較されるのを女の本能で察知したのか、娘はまともに並ぼうとしない。
やれやれ。

なんとか撮影してもらい木陰で水分補給と休憩をしていると女の子の1人が「こびと図鑑」を取り出し、こびと探しを始めた。
ユニークなこびとがたくさん載っており、女の子は「この辺りに絶対いると思う!」と言って真剣にこびと探しを始めた。
私も小学生の頃、近所の用水路で一日中カッパを探したものだ。
「あそこに居るよ!絶対!」と見上げるその子が指差した先には直径10センチほどの木のウロがあった。肩車すれば覗けそうだ。
「肩車しようか?」と言うとウン!と頷く。
私は渾身の力で女の子を持ち上げ肩に乗せた。
その時、背後から娘の絶叫が聞こえた。振り返るまでもなく理由はわかった。
ファザコンの娘が猛烈にジェラっているのだ。
「うわーーん!リーちゃんの!リーちゃんのパパー!」
周りの親御さん達から失笑が起こる。
やれやれ。
木のウロには残念ながらこびとはおらず、女の子は別の場所にこびと探しに行ってしまった。
涙をいっぱいに溜め激怒している娘を抱きしめ、おざなりに謝る。
あっという間に機嫌を直して再び芝生を駆け二人の女の子と合流する。
知的障がいや肢体不自由、健常など大人が引いたボーダーラインなど全く意識せずに遊ぶ子ども達はまさにBorderless kidsだった。

ヴィジュアルアーティスト Noelさんの撮影したボーダー柄のステキなTシャツを着た子どもたちがボーダーレスな世界を我々大人に教示してくれるであろう「Borderlessな子どもの世界」写真展が今から楽しみで仕方ない。

娘のおかげでまた素敵な方々と知り合うことができた。
娘よいつもありがとう!
朝の予感通り素晴らしい一日を過ごすことができた。

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