DANCE DRAMA 「Breakthrough Journey」|芸術の秋

東京芸術劇場のある池袋は高校が後楽園で埼玉県に友人が多く、一時期は毎晩遊んでいた街だ。もう30年以上前の話だ。
治安が悪くダーティーなイメージは日本のサウスブロンクスみたいだった。
土地勘が薄れ、街並みも変わりまるで違う街のようにきれいになった駅前を歩き、目的の東京芸術劇場にたどり着いた。

今日は”dance drama Breakthrough Journey”を観劇に来たのだ。
今回はちびっ子NGとのことで単独参加。
Breakthrough (ブレイクスルー)とは”突破”の意味だ。
今回の舞台を知ったのはSNSで繋がる沖縄の友人の情報だった。カナデノウツというチームでダンスの先生をしている友人エリカ先生は教え子がこの舞台に出演することをすごく喜んでいた。

映画や観劇をする時、私はパンフレットや口コミ情報は一切見ないことにしている。
事前に情報が入ってしまうとなんだか損した気になってしまうのは、貧乏性だからなのかもしれない。
タイトルだけで判断するもんだから、ロードオブ・ザ・リングのDVDをレンタルしたつもりが貞子さんが出てきたりする。
今回の舞台もタイトルからは内容がなかなか想像できない。
ワクワクしながら劇場の入り口をくぐった。
障害を持つ方々の舞台だからだろう。車椅子エリアもバッチリ完備されている。
色々なイベント会場の大ホールはたまに入るが本物の「劇場」は初めてだ。
天井の高い大空間に圧倒される。ステージまではだいぶ距離がある。ちゃんと観劇できるだろうか。前の席に高身長の観客が来ないことを祈る。
会場内は飲食禁止とアナウンスにより映画館のようにポップコーンとコーラを楽しむことができないと知った私は3時間の長丁場、お行儀よくいられるかちょっと心配になる。

スマホの電源が切れていることを確認し、開演の時を待った。
照明が徐々に照度を落としやがて真っ暗になった。
舞台背景の左上に聴覚障害者のための字幕が映る。オープニングは傘を使った大人数のダンスだ。めまぐるしく変わるフォーメーションと傘を効果的に使ったダンスにあっという間に引き込まれていく。
「おぉすごい!」
一人で来た私は誰ともなく呟いていた。
ダンスパートが捌け主人公のシーンだ。舞台上には主人公と彼の心情を司る数人の演者。
スピーカーから流れる台詞と演者の動きのシンクロが見事だ。
舞台の上には必要最小限のセットしかなく、ピンスポットで照らされた中でストーリーが進む。それがかえって没入感を高める。
場面転換などのタイミングでストーリーに違和感なく挿入されるダンスパートでは一転ステージを広く使った演出となる。
拙い文章であらすじをなぞることは余り意味がないかもしれない。

「カメラマンを志す少年がSNSで知ったダンスは上手いが周りに馴染めない少女にシンパシーを感じ、少女に会い写真に収めるためアジア各地や日本各地を旅して回る。様々な困難を乗り越えついに少女に会うことができた少年は、、、、」

文字という記号にして並べてしまうとどうにも歯痒い。私の拙い文章力では千分の一も表しきれない。残念。

私の席からは舞台上の方々の表情は読み取ることはできないが、喜怒哀楽以上の細かい感情表現までそのダンスから感じることができた。
最前列では首を回さなければ見渡せないステージの全貌を一眼で観られる後方席はむしろラッキーだったかもしれない。
主人公の旅路は日本国内・アジア各地から参加しているダンサーの出身地を巡り、それぞれのシーンで出身地の特色を持った演舞を披露するのだ。
今回の観劇のきっかけになったカナデノウツのある沖縄のシーンでは彼の地の景色が思い浮かび、三線の音色に舞うダンサーを観ながら、また沖縄に行きたいなぁと切に想った。
コロナ禍のため、外出や移動を控えなければならなかった近年、体力と共に行動力も衰えたのだろうか、主人公のように何かにがむしゃらに向かって行くことがなくなっていたことに思い至る。
ブレイクスルーしてないな。俺。

コムコム
コムコム
カナデノウツの一員の気持ちで観劇してきました!!

緩急のあるストーリーと圧巻のパフォーマンスのため長丁場だと思った3時間はあっという間だった。
その中で私が一番感動したのは演者さんたちが次々と舞台に出てくるラストのカーテンコールだった。
この100人近いパフォーマーとそれに倍するスタッフが集い一つの作品を作り上げ、成し遂げた瞬間に立ち会えたことに感動し、全身に鳥肌が立ち眼頭が熱くなった。

あわよくば観劇のきっかけになったダンサー「RIKU」に挨拶したいと思っていたが、パフォーマンスを完遂した余韻のなか、目を腫らしたアラフィフおやじに絡まれても困るだろう。私もきっと眩し過ぎる彼を直視できなさそうだ。
今日のところは大人しく帰ろう。
会いたい人には会いに行けばいいのだ、主人公のように。
東京芸術劇場前の広場を横切りながら沖縄への”ブレイクスルー ジャーニー”という名の旅行を決意するのだった。

コムコム
コムコム
素晴らしい舞台だったが疑問も残った。
公演日数が二日間しかないのは勿体無いと思う。ロングランで沢山の人に観てほしい。

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