重症児ガール [ ママとピョンちゃんのきのう きょう あした ]

新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るい、外出を自粛する生活の中で有意義な時間を過ごしたと思えるのは読書の時間が増えたことです。
読みたいと思って購入したものの時間がなく、なかなか読めずにいた本があります。

「NPO法人 なかのドリーム」
「放課後デイサービス おでんくらぶ」

で代表を務めている福満美穂子さんが2015年に執筆された。
“重症児ガール”
重症心身障がい児の育児に関する書籍としては正直少し違和感のあるネーミングと感じました。

“重症児ガール”の主人公は”ぴょんちゃん”。ど根性ガエルに出てくるぴょん吉とヒロシの一連托生の関係を自身の母娘関係と重ねて娘を”ぴょんちゃん”と本書の中で呼んでいます。
ぴょんちゃんが脳性麻痺になった時のことや気持ちが辛かった時のことは最初の数ページで、本編のほとんどはぴょんちゃんの障がいを揺らぎながらも受け入れ、前を向いてからのぴょんちゃんとお母様の日常を明るく簡潔に細かい単元で纏めてあります。
過去は(あまり)振り返らず、今と未来のためにどうしているのか、どうしたらいいのかをさりげなく読者に教示しているようです。

本書の中で何回かドキッとする箇所がありました。
ぴょんちゃんのママは「子どもへの愛情を実感できない」ことに苦しんだことをさらりと告白し、「母性は育児をすることによって育まれる」と結論しています。
私も障がいを持って生まれた我が子を受け入れられず”暗黒期”と呼ばれる時期を過ごした親御さんと少なからずお会いしたことがあります。
“暗黒期”の親御さんは障がいを持った子どもを受け入られないと言います。
しかし、それは障がいを持った子どもを受容できないのではなく、子どもに愛情を持つことができない自分に驚き「こんなはずじゃない。この子に障がいがあるから愛せないのだ」と思い込んでしまうからだとぴょんちゃんのママは言っています。
そして”暗黒”は永遠に続くものでなく、自身の母性が育まれることによって自然に愛情を持つことができることを自身の経験として教えてくれているのです。

また、反応の少ない我が子に黙々と栄養剤を与えてオムツを始末している様を「育児をしているのではなく、飼育をしているのではないか」と表現している箇所もあります。
正直過ぎて非難されそうですが、そこには当事者の親御さんがそう感じ罪悪感に苛まれた時に「私だってそんな時もあるよ。あなただけじゃないんだよ」と寄り添うようなぴょんちゃんのママの優しさを感じるのです。

さらには子どもの死について身近に感じ、重い障がいを持った子どもの親御さんたちとの会話の中で、”子どものお墓の話”や”遺骨を入れるペンダントの話”など、普通では考えられない子どものエンディングについての会話が日常になっていることも書かれています。

ほとんどのエピソードが健常な子どもや軽度の障がいを持った子どもの育児をしている方々には無縁のことかもしれません。

この本のターゲットは明確です。重症心身障がい児を育児している親御さんが対象読者なのです。
重症心身障がい児を育児している親御さんにはオブラートで包まれた綺麗事の育児書など何の意味もないのです。
ぴょんちゃんのママは自身の経験をオブラートに包むことなく当事者でなければ「不謹慎」と言われそうなことまで対象読者に伝えようとしています。

最初に”重症児ガール”というネーミングに感じた違和感は”重症心身障がい児に関する書籍はシリアスなネーミングであるはず”という私の固定観念からくるものでした。
本を読み終えた私は”重症児ガール”というネーミングがこの本にピッタリのネーミングだと感じていました。
ぴょんちゃんのママをはじめ、重症心身障がいを持った子どもを育児している方々が特別にシリアスになる必要などないのです。
特に印象に残ったぴょんちゃんママの言葉があります。”価値観の転換”
これは「障がい児」は「障がい」を持った普通の子であり、ぴょんちゃんのママにとってはぴょんちゃんとの生活が「普通の子育て」だと言うこと。
ぴょんちゃんの甘い匂いをかぎ、愛しい存在がいることを幸せに思う母親の姿は「普通の母親」と何も変わらないのです。
普通の母親が障がいを持った普通の子との日常を綴った本です。

障がい児を育児中の”価値観の転換”に手こずっている親御さんには必ず読んで頂きたい本です。
私の”固定観念”という独りよがりの”価値観”を転換させてくれた”重症児ガール”
是非、障がい児を育児していない方々にも読んでほしいと思います。

重症児ガール (日本語) 単行本(ソフトカバー)
福満 美穂子 (著)

もくじ
 1部 ピョンちゃんとの暮らし
  1章 はじまり
  2章 わが家の日常
  3章 外のせかいへ
  4章 受け入れる
 2部 ピョンちゃんのいろいろ
  5章 からだのこと
  6章 おでかけのこと
  7章 嵐のこと
  8章 通じあうこと
 終章 しなやかにいこう!

出版社:ぶどう社
定 価:1500円+税
発 行:2015年11月

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