マジェルカが閉店するというニュースが飛び込んできた。
大袈裟じゃなく血の気がひいた。
マジェルカとはウェルフェアトレードを実現すべく2011年に営業を開始した雑貨店だ。
代表の藤本さんは福祉事業所の作品を一般小売の販路に乗せ、ビジネスとして成立させた第一人者だ。
ステキな作品が商品として取り扱い、おしゃれなショップに並んでいる様は福祉に関わる人だけでなく、知らずに通りかかった人の心も掴み広くない店内はいつ行っても賑わっていた記憶がある。
福祉作業所からは「マジェルカに置いてもらえるようなモノを作りたい」そんなモチベーションを上げる存在であり、
「マジェルカみたいなお店を作りたい」と福祉ショップを始める人が目標に掲げるお店であった。
様々な方面から支持され、我々COMUGICOも密かに憧れていた。
そんなマジェルカから突然閉店の知らせ。
マジェルカのSNSのコメント欄には閉店を惜しむ多くのメッセージやヘビーユーザーの悲痛な叫びが寄せられていた。
私の目には福祉とビジネスを高い次元で両立させた成功モデルと映っていたが、どうやら私の目は節穴だったようだ。
代表の藤本さんとしっかり話をしたことはなかった。COMUGICO掲載について許諾を得るためにメールを送り、後日お店に伺い挨拶した程度だ。
当時、福祉ビジネスの成功者であるマジェルカにCOMUGICO掲載のメリットなどないのかもしれないと思ったが、ウェルフェアトレードの理念を少しでも世の中に拡めたかったのだ。
近年のシャッターアートプロジェクトやクラウドファウンディングなどの活発な活動はマジェルカの灯火が消える前の一瞬の煌めきだったのだろうか。
このままマジェルカは伝説となってしまうのか。
ウェルフェアトレードは理想で終わってしまうのか。
閉店を知った全国のファンが店舗やオンラインショップでの来店・購入報告を惜別のメッセージと共にSNSに上げている。
寂しくなっていく商品棚をSNSの画面で見るたびに胸が苦しくなった。
ある日マジェルカが懇親会の開催を告知していた。私に躊躇はなかった。即座に参加希望の旨を伝えた。
コアなファンや常連さん、作品を卸していた作業所の方々のためのお別れ会なのだろう。
決して濃密なお付き合いをしていたわけではない私はきっと外様で居心地がいい場ではないはずだ。
広くない店内で開催するとのことであったので、もしかしたら遠慮してほしいと連絡があるかもしれなかった。
幸いその連絡はなかった。
バスに揺られ吉祥寺へ向かう。途中渋滞しており到着が10分くらい遅れそうなのでメールを入れた。
マジェルカのある中町通りはかなりの人出があった。新宿や渋谷のような派手さはないが独特な雰囲気の個性的なお店が並ぶ。
通りから一歩奥は住宅街だからだろうか、行き交う人は心なしか落ち着いた感じの人が多い。
賑やかな通りとは裏腹にマジェルカに近づくにつれ気持ちが沈んでいく。
マジェルカが見えた。店先には空の棚が並び、僅かに残った商品を載せたラックが淋しげに立っている。
寂寥感漂う店先を店内の明かりが不釣り合いに明るく照らす。
素通しのガラスサッシの中は案の定、多くの人が着席していた。
「遅れてすみません、、。」
中に入り空いている椅子に座った。
老若男女様々な人達が商品台を寄せたテーブルを囲んで輪になっている。
自己紹介の最中だったようだ。
上着を脱いですぐに私の番になった。
「あ、コムギコさん!」
対面に座った藤本さんがトレーナーのロゴマークに気付いてくれた。嬉しい。
今日はあくまで”外様”だ。へんにシャシャリ出たりするまい。
嬉しいとすぐに調子に乗ってしまう自身へ、改めて自重を戒める。
COMUGICOのサイトについて少しとマジェルカさんをCOMUGICOへ掲載させて頂くことになったいきさつを簡単に説明し、自己紹介とさせて頂いた。
全員が自己紹介を終えて、藤本さんがいよいよ本題を切り出した。
「えー、お集まり頂きありがとうございます。」
全員背筋を伸ばし、決定的な発表を待った。
ゴクリと唾をのむ。
「実は、2、3日前に急展開がありまして、、、
やっぱり閉店しないことにしました。」
ズコー!
吉本新喜劇だったら全員イスから落ちるリアクションを取っただろう。
藤本さんは結果的に閉店詐欺みたいになってしまったことを詫び、顛末を語ってくれた。
コロナ前と後で大きくお客さんの消費行動が変わり、店頭での売上が回復しなかったことが直接的な原因であるが、近年マジェルカの代表として心を折られる出来事が頻発していたことを明かしてくれた。
資本主義経済の根本である需要と供給の原則に照らせば仕方ないことかも知れないが、ビジネスマナーの側面から見れば無礼にもほどがあるような対応を度々受けていたという。
「閉店を決意した時は心がボロボロだったうえ、資金的にも限界を超えていました。
ウェルフェアトレードを実現し、福祉事業のスタンダードにするという面では正直敗北を認めざるを得ません。」
そう話す藤本さんはどことなく吹っ切れたようなサッパリした表情であった。
そして今後の事業展開についても明かしてくれた。
新生マジェルカは福祉事業所へ対するウェルフェアトレードは維持するものの組織運営の原資は不安定な物販の利益に頼らず、マンスリーサポーター費とレンタルスペースの利用料とし、
今まで地下にあったレンタルスペースを新たに1階の路面店舗に移転してシェアスペースの高収益化を図る。ショップは地下に移転し縮小しつつも機能は維持するという。
実に合理的な作戦だ。
既にブランドとして定着している物販についてはマジェルカを目指して来店するお客さんにとって店が路面である必要などない。地下だろうが地上15階であろうが来店する人は来店する。雑貨が欲しい人はネットショップもある。
路面に展開するシェアスペースはわかりやすい立地と入りやすい路面スペースが有効だ。
イニシャルコストを掛けずに商品販売するにはもってこいだし、やがてこの場所でポップアップショップや展示会を行うことがステイタスになるだろう。
そしてマンスリーサポーター制度。
一定の安定した収益を確保することにより、綱渡りのような経営に苦しまずにすむのだ。
余裕ができた分だけ新たな商品開拓や仕入れ先との協業、商取引教育などもう一段高みに登ることができるだろう。
御通夜のような雰囲気で始まった懇親会は、いつの間にか笑顔溢れる新生マジェルカの壮行会のようになっていた。
嬉しいと調子に乗る私はいつの間にか饒舌になり、他の方々と同じように藤本さんとの会話に加わっていた。
“外様”だからと参加申し込みをしていなかった二次会にも参加させて頂けることになり、飲み慣れないアルコール飲料などを飲んで参加者の方々と親交を深めることもできた。
藤本さんが悔しさを滲ませ口にした「敗北」という言葉がとても印象的であった。
マジェルカはある意味では負けたのかもしれない。
しかし負けを受け入れた者しかリスタートできないのも事実だ。
勝負は第1ラウンドで終わりではない。
マジェルカには多くのファンやマンスリーサポーターがセコンドについている。
私もセコンドの末席から精一杯応援させて頂くのだ。
新生マジェルカの大逆転が今から楽しみで仕方ない。
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