SNSはCOMUGICOの活動として大きな割合を占めています。
今回はSNSで繋がった”photo studio HOME”さんに伺いました。
身内に当事者がいない場合、障がいや難病についてなかなか自分事として捉えられないと思いますが、家族ましてや我が子が障がいや難病などに見舞われた時、家族として親として「なんとか幸せにしたい」と願うことはある意味当然の心の動きであり我が家も例外ではありません。
しかしCOMUGICOで出会った中には、身内にそういった支援を必要とする人が居なくても自ら積極的に関わりを持ち、人生を懸けて「支援の必要な人々の幸せ」を追求している方々がいます。
“photo studio HOME”の葛谷さんもその一人で、20年前に読んだ出生前診断の記事に触れて疑問を持ちダウン症児の撮影を始めました。
そして今、障害のあるお子様と親御さんをモデルに「私の笑顔、届けよう!」プロジェクトを行っており我が家も参加させて頂くこととなりました。
コロナ禍で極度に外出を控えていた私たちはレンタカーを借りて久しぶりのドライブです。
目的地は横浜にあるフォトスタジオHOME。
オリジナルTシャツを作って親子コーデで撮ってもらおうとか、色々画策していたものの結局いつも通りのありのままを撮ってもらおうと普段着で横浜に向かいました。
天気は快晴、それほど混雑していない道を一路横浜へ。快適なドライブに後席の娘はご機嫌でコンビニのおむすびを食べています。
スタジオの住所をカーナビに入れていたのですが、そろそろ到着という時「目的地が近くなりました。後はご自分でどうぞ。案内を終了します。」のアナウンスがあり、レンタカーのカーナビは唐突に案内を放棄しました。呆然としていると、後ろの車にクラクションを鳴らされ、慌てて駅に併設された商業施設の駐車場に車を入れました。
時刻は約束の時10分前。少し遅れてしまいそうだったのでその旨を連絡すると、商業施設の1階まで迎えにきてくれるとのこと。
方向音痴の我々が初めての住宅街で遭難することは目に見えていたので、ありがたくその申し出を受けることにしました。
「こんにちは!はじめまして」
待ち合わせ場所に現れた葛谷さんはマスクをしていましたが、娘を見るその眼差しは本当に優しさに溢れ愛おしいと思ってくれていると感じました。
気持ちいい秋晴れの中、少し不安げな娘を抱っこしてスラリとしたスタイルの葛谷さんの後ろをついて行きます。
駅から程近いのにも関わらず住み心地のよさそうな閑静な住宅街を歩くこと数分、外観からしてデザイン性に溢れたセンスのあるエクステリアの御自宅兼スタジオに到着しました。
“photo studio HOME”
立て看板もオシャレです。
「おぉステキ!」
枕木を敷いたエントランスを通り、木製の大きな引き戸が玄関兼スタジオ入口です。
天井が低く狭い我が家と違い、吹き抜けになった高さのある空間と、見慣れない撮影機材に少々圧倒されて辺りをキョロキョロ見回していると、奥から旦那様が出迎えてくれました。
旦那様は新聞社でデスクという要職についているとのことですが、柔らかい物腰とその眼差しは奥様と同じ暖かい雰囲気です。
類は友を呼ぶのでしょうか。
我が家も見習いたいと思うご夫妻です。
空間を有効に使ったシンプルかつ清潔感のあるスタジオの控室で簡単な書類にサインをし、いよいよ撮影です。
ただでさえ場所見知りがちな娘は、親の緊張を肌で感じとったのか、自宅での横柄で大胆な態度とは別人のように硬い表情で私の服にしがみつき、不安そうな声を上げています。
しかし思い通りに撮影できないなんてごく普通のことのように葛谷さんはニコニコしながらテキパキと撮影していきます。
色々なおもちゃであやしたり、なだめたりしながらなんだか申し訳なく思っていた時、旦那様がキャラクターの帽子を被りカメラを構えた葛谷さんの後ろから顔を出すと娘の表情がパッと明るくなりました。
さすがプロカメラマンはその表情を見逃しません。
「パパさん!高い高いして、娘さんをこちらに向けて下さい!」
なかなかの無茶をおっしゃいます。
約15kgの娘を高い高いして空中で娘をひねると娘の笑顔と引き換えに私の表情が苦悶に満ちたものになってしました。
その後の撮影は順調に進み、撮影が終わる頃には娘は完全にリラックスしていました。
↓妻撮影
お茶とお菓子を頂きながら少し待っていると、先程撮影した写真をパソコンで見せてくれました。
私の汗や表情は加工でなんとかしてもらうとして、娘の表情はどれも100点でした。さすがプロフェッショナル!
支援が必要な多くの方々と撮影を通じて関わりを持った葛谷さん御夫妻と、居心地の良いこの空間でもっとゆっくりじっくりお話ししたいと思い、
「今度、ゆっくりお話ししたいです!」
正直に気持ちを伝えると、
「是非!是非!」
と嬉しいご返事を頂き、後ろ髪を引かれながらphoto studio HOMEを後にしました。
お昼寝ナシで頑張った娘は幹線道路の渋滞が丁度良いゆりかごになったのか、帰りの車はスヤスヤでした。
実は葛谷さんは以前から私たちのことを知ってくれていました。以前新聞に取材してもらった際の記事を読んでくれていたのです。
その記事を切り抜きでとっておいてくださり、私たちのことを覚えていてくれたのです。
その記事の写真を撮影してくれたカメラマンの方も旦那様の知り合いとのことで、なんだか不思議な御縁を感じました。
その記事では他の方々からも連絡をいただいたり、繋がりを持つことができ、インターネット全盛の昨今ですが、紙媒体の新聞というメディアもまだまだ重要だと再認識しました。
インターネットの情報は刻々と更新され常に最新の情報にアップデートされますが、記者さんが取材対象に向き合い時間をかけ丁寧に作成した記事は読者を惹きつける何かがあるのだと思いました。
数日後、自宅に郵便が届きました。
シンプルな白木のフォトフレームに入った娘と私の写真でした。モノクロームの写真は色彩のない分ストレートに撮影者のメッセージを感じる気がします。
ファインダー越しの愛情がフォーカスに影響しているのか、パソコンの画面で見るよりも立体的でふんわりとした雰囲気。
そして印画紙に焼き付けられた揺るぎない事実はクリックやスクロールですぐに切り替えられてしまう刹那的な画像にはない存在感を感じるのです。
これは必ずしも昭和生まれのアナログ人間の感覚だからではないようです。
だって、平成生まれの娘が写真立てを抱きしめて離さないんですから。